「ウェアラブル」はまだまだ本当のウェアラブルじゃない:”元年”なんて呼ばせない
「猫も杓子もウェアラブル」な昨今。でも、こんなものじゃない、と思うのです。
○○元年、という表現にいい加減うんざりしている人は少なくないと思う。電子書籍元年、クラウド元年、4K元年。中でも昨年あたりから何度も繰り返し聞いたのが「ウェアラブル元年」という言葉。
確かに最近は猫も杓子もウェアラブル、といった具合で、Google GlassのようなアイウェアからNike Fuel Bandのような活動量計、あるいは来週に発表会が控えているApple Watchなど、何かと話題には事欠かない。
しかしこれらのガジェットが、まだどーーうにも筆者にはしっくりこない。ウェアラブル=身に着けられる、という語義からすればもちろんこれらはウェアラブルに違いないのだが、腕にしろ目元にしろ「身に着けていることを(否が応にも)意識させられてしまう」という意味で、「もうちょっとどうにかなんないのかなあ」と思うわけです。
本当の(?)ウェアラブルというのは、やはり「身に着けているかどうかすらまったく感じさせない」ものになってほしいよな、と思う。筆者自身が、何かを腕に着けたり首からぶらさげたりするのに抵抗感が強い方だということもあるのだろうが、全体的にこういったガジェットはもっと自然でさりげない方向に進化していってほしい。
その点からすると、仏シチズン・サイエンス社が昨年発表した「D-Shirt」(まだ試作品だが)なんかは未来の一端を感じさせるもので、これはつまり「服そのもの」がデバイスになっている。導電性のある繊維にセンサーチップなどを織り込んで服に仕立てたもので、心拍センサーや水分センサー、GPSなどを実装できるそうだ。
服にウェアラブルデバイスを取り付けるのではなく、服そのものがデバイス。洗濯どうするの、と思わないでもないが、公式動画では最後にわざわざ洗濯機にシャツを放り込むし、開発元のCEOも「ちゃんと洗えるようにします」と言っているらしいから要らぬ心配はせずに待ちたい。
服と言えばもう一つ、こちらは試作品どころかコンセプトビデオでしかないが、ラコステが過去に制作したCM「Polo of the Future」も夢のあるものだった。登場人物たちが1枚のポロシャツの色を自在に変えながら、あるいはサイズを変えたり半袖と長袖を切り替えたりしながら街を練り歩く。公開は確か2012年末だったと思うが、はーウェアラブルってこういうことなのかーと思ったりしたものだ。
ウェアラブルはまだまだこんなものじゃない。これからもっと想像を超えて、快適で、愉快で、わけの分からないものが出てくる。そしてそれが、センサーなのかロボットなのか人工知能なのか、どれをとっても今とてつもなくおもしろい時代に差し掛かっている“何か”とくっついて、世の中をさらにおもしろく、騒がしくしてくれる。そんな風に想像している。
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