専門医に聞く舌下免疫療法(3)石の上にも3年、と心得よ

花粉症を根本から治療する「舌下免疫療法」について、アレルギー専門医である「ながくら耳鼻咽喉科アレルギークリニック」の永倉仁史院長にお話を伺う第3回です。

» 2015年03月10日 06時00分 公開
舌下免疫療法

 従来からあった花粉症の治療法“皮下免疫療法”は、注射を使うため、定期的な通院が必要であり、痛みや腫れを伴うものでした。さらには、強い副作用が起こる可能性もあり、有効性は高いもののなかなか広まらなかったようです。

 そんな皮下免疫療法の進化版とも言えるのが「舌下免疫療法」。これまでの欠点を改良した新たな療法とは、具体的にどんなことをするのでしょうか。治療の方法や期間などについて、永倉先生にお話を聞きました。

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自宅で、自分で行えるから手軽!

ながくら耳鼻咽喉科アレルギークリニック 永倉仁史院長

――具体的に「舌下免疫療法」はどのようなことをするのでしょうか。

永倉先生:まず、検査を受けていただき、花粉症の原因を特定します。スギ花粉症でない場合、舌下免疫療法を試みても効果は得られませんから。

――現状では、スギ花粉症にのみ有効だということですね?

永倉先生:はい。ワクチンがスギ花粉症のもののみなので。今年の夏頃にはハウスダストに対するワクチンも実用化の予定ですし、今後はさらにいろいろなアレルギーに対応できるようになると思います。

――それは期待したいですね。では、検査の後、実際の治療に入ってからの工程を教えてください。

永倉先生:最初の2週間が“増量期”といって、薄い治療液を1プッシュするところから始め、徐々に量を増やし、8日目からはそれまでの倍の濃さの治療液をまた1プッシュから初めて、徐々に量を増やしていきます。

治療に使用する「シダトレン スギ花粉舌下液」。昨年保険適用され、患者の負担額が3分の1で済むようになった

――これは、毎日クリニックへ通って行うのですか?

永倉先生:いいえ、初回の投与だけ医療機関で行えば、後は自宅で毎日、自分で服用するのが基本です。

――それは手軽ですね。増量期の後はどのような治療になるのですか?

永倉先生:その後は“維持期”と言って、決められた量の治療液を毎日、服用していただきます。これも基本は自宅で、自分で行いますが、月に一度の定期的な受診が必要になります。また、舌下免疫療法の治療液は、昨年の10月に国の認可が降りたばかりなので、今年の10月までは2週間分しか処方できないことになっています。ですから、それまでは2週間ごとの通院をお願いしています。

急がば回れ。長い目で治療に取り組もう

――維持期の治療というのは、どのくらい続ければいいのでしょうか?

永倉先生:最低でも3年、できれば5年ほど続けてほしいですね。確かに根気のいる治療になるので、途中で辞めてしまう患者さんもいらっしゃいます。けれど、続ければ確実に効果は表れます。毎年毎年、この季節が来るたびに花粉症に悩まされては薬で症状を抑える、というその場しのぎの対症療法ではなく、根本治療でもう花粉症に悩まされない身体を目指してほしいです。

――どうしても即効性を求めがちですが、3年で花粉症とさよならできるなら、その方がずっといいですね。

永倉先生:花粉の多い年や少ない年で症状の出方も違いますし、治療の効果も変わります。継続は力なり、と長い目で見て治療に取り組んでいただきたいですね。

明日の更新では、永倉先生のお話も最終回。舌下免疫療法についての注意点やさらなるメリットについてお伺いします>

永倉仁史(ながくら・ひとし)

ながくら耳鼻咽喉科アレルギークリニック 院長

昭和57年、東京慈恵会医科大学卒。

昭和60年、東京慈恵会医科大学耳鼻咽喉科アレルギー外来担当となり、鼻アレルギーの治療及び、減感作療法を専門とする。その後、環境省の「アレルギー性疾患増加の原因の究明に関する研究」や、文部科学省委託「スギ花粉症克服に向けた総合的研究」に参加。アレルギー専門医としての実績と経験を積んだ。平成18年、ながくら耳鼻咽喉科アレルギークリニックを開院、院長となる。

日本耳鼻咽喉科学会認定専門医/日本アレルギー学会認定「アレルギー専門医」・代議員/花粉情報協会理事


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