専門医に聞く舌下免疫療法(4)アレルギー体質からの脱却
花粉症に悩める、すべての人に贈る特集第4回。アレルギー専門医である「ながくら耳鼻咽喉科アレルギークリニック」の永倉仁史院長に「舌下免疫療法」についてお伺いする最終回です。
3〜5年ほどの治療期間を擁する「舌下免疫療法」。言葉で聞くと長いと感じますが、毎年、花粉症を抑えるための薬を飲み続けている人からすれば、手間は同じ。しかも「舌下免疫療法」なら、続けていれば症状は改善されていきます。
であれば、これまで通り、一時的に症状を抑える薬を飲み続けるか。それとも、腰を据えて「舌下免疫療法」に取り組むか。その選択はたやすいでしょう。さらに「舌下免疫療法」にはほかにもメリットがあると、永倉先生は言います。
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早く始めれば、ほかのアレルギーの抑制に!
――3〜5年の維持期の後は、花粉症はもう発症しないのでしょうか?
永倉先生:そうですね。治療は一度、区切りをつけても問題ないでしょう。万が一、数年後に花粉症が再発したとしても、再び、舌下免疫療法をすれば、症状は治まります。その場合は3年も治療を続ける必要はありません。以前に治療した記憶を身体が覚えていますから。
――若いうちに発症した場合、それだけ長く花粉症と付き合うことになりますから、なおさら、舌下免疫療法に取り組んだ方がいいですね。
永倉先生:年によって量の変化はありますが、スギ花粉そのものがなくなることはありませんから、早めに始めていただくに越したことはありません。特にお子さんの場合、早めに免疫療法を受けておくと、他のアレルギーを起こしにくくなることもわかっています。
――花粉症の治療で、他のアレルギーも防げるということですか?
永倉先生:花粉症に限らず、他のアレルギー性鼻炎や喘息も、同じ気道で起こっている症状です。放っておけば重篤化したり、他のアレルギーと合併する可能性は高いのです。しかし、免疫療法を行なっていれば、この連鎖を抑え少なくすることが実証されています。
6月まで待って、治療をスタートしよう!
――舌下免疫療法を受けられない人などはいますか?
永倉先生:重い喘息症状のある方や血圧の高い方は難しいですね。また、妊婦さんもお受けできません。治療をしている最中に妊娠した場合は問題ありませんが、妊娠をしてから治療を始めるのはNGですね。
――なるほど。ほかに注意点はありますか?
永倉先生:スギ花粉が飛んでいる時期に治療を始めることはできません。ですから、今の時期は新しい患者さんはお受けしていません。地域によっても誤差はありますが、だいたい6月〜12月の間なら、いつでも治療を始めることができます。
――今年の花粉シーズンはなんとか自力で乗り切り、6月になったら治療をスタートさせるのが最短コースですね。ちなみに、治療費はどのくらいかかるものでしょうか?
永倉先生:治療液は1日100円程度。月に3000円ほどですが、保険が適用になったので、今は3分の1の月1000円で受けられます。
――そのくらいなら大きな負担なく続けられますね。永倉先生、ありがとうございました。
永倉仁史(ながくら・ひとし)
ながくら耳鼻咽喉科アレルギークリニック 院長
昭和57年、東京慈恵会医科大学卒。
昭和60年、東京慈恵会医科大学耳鼻咽喉科アレルギー外来担当となり、鼻アレルギーの治療及び、減感作療法を専門とする。その後、環境省の「アレルギー性疾患増加の原因の究明に関する研究」や、文部科学省委託「スギ花粉症克服に向けた総合的研究」に参加。アレルギー専門医としての実績と経験を積んだ。平成18年、ながくら耳鼻咽喉科アレルギークリニックを開院、院長となる。
日本耳鼻咽喉科学会認定専門医/日本アレルギー学会認定「アレルギー専門医」・代議員/花粉情報協会理事
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