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» 2015年04月01日 06時00分 UPDATE

“ウェアラブル”の今:第22回 Apple Watchで“1秒コミュニケーション”を目指す「Nain」とは

「Watchアプリ」が用意されたiPhoneアプリのリリースが始まり、徐々にApple Watchでどんなことが実現されるのかが見えてきた。スマートウォッチで“1秒コミュニケーション”の実現を目指すNainもその1つ。

[松村太郎,ITmedia]
Nain

 Apple Watchの予約開始まであと2週間に迫った3月末、App Storeには、Apple Watch向けのアプリを含んだiPhoneアプリが大量にリリースされた。

 すでにAppleのメディアイベントで披露されたアプリは、同社のWebサイトでも紹介されている。しかしそれ以外にもたくさんのアプリが登場している。

 日本の開発者のアプリも、「クックパッド」「エキサイトニュース」「Yahoo! ニュース」「Yahoo!乗換案内」「ヤフオク」「iSPEED株取引・投資情報」「JAL Countdown」「LINE」などが挙げられる。

 4月24日の発売までの間に、さらに多くのアプリがWatchアプリを含むバージョンを公開するとみられており、Apple Watchを購入してiPhoneとペアリングした瞬間から、スマートウォッチの体験を始めることができるはずだ。

「iPhoneとペアリングが前提」はアプリも同じ

 Apple Watch向けのアプリは、2014年11月に公開された「WatchKit」を用いることで開発できる。しかし、Apple WatchがiPhoneとのペアリングを前提にしていることと同様に、WatchアプリもiPhoneアプリとの一体化が前提となっている。

 前述のApple Watch対応アプリというのは、すなわち「Apple Watch向けアプリを含む」iPhoneアプリのことだ。

 Appleがあらかじめ収録しているアプリをのぞいて、開発者がリリースするアプリは、iPhoneアプリとともに利用することが前提になる。単体で利用できるWatchアプリが作れないということは、開発者にとっては“制限がかけられている”という受け止め方になるだろう。

 しかし、実際の使い勝手を考えてみると、現実的な選択でもある。例えば、クラウド上にあるデータにアクセスするアプリは、iPhoneがなければインターネットを利用できないし、ログイン時にIDやパスワードを入力しようにも、Apple Watchにはキーボードがない。

 また、ディスプレイも小さく操作体系もiPhoneほど多彩ではないため、単体のアプリとして成立させることはかなり難しいと考えられる。こうしたアプリによってApple Watchの使い勝手を損なうことは、Appleも避けたかったのではないだろうか。

スマートウォッチでのコミュニケーションを考えたNain

 スマートウォッチ向けのアプリ市場がこれから本格的に立ち上がろうとするタイミングで、産声を上げた企業に、ネインがある。

 「AIが生活に入り込む世界」を前に、これらをより簡単に実現する社会を目指す企業として、パイオニア出身でカーナビなどの車載機器開発に携わってきた山本健太郎氏と、長年Web開発を行ってきた熊谷太史氏によってスタートした。

 同社が開発したウェアラブルAIメッセンジャーアプリ「Nain」は、スマートウォッチを装着している人の状態を検知してステータスメッセージを作成する仕組みや、腕からすぐに友人をランチに誘えるなど、非常にシンプルかつ親密な「リスト・メッセージング」を実現している。

 当初はAndroid Wear向けのリリースとなったが、Apple Watch向けのアプリも準備している。スマートウォッチ向けのコミュニケーションアプリとして、クロスプラットフォームを実現しており、Apple Watch間のみのコミュニケーションにはできない、Android Wearユーザーとのやりとりも可能になる。

Nain AndroidとAndroid Wearで動作するNain。Apple Watch対応版もリリースする

「1秒」のコミュニケーション

 山本氏は、Nainを「1秒メッセージング」と紹介する。

 「描いている世界は、コミュニケーションの表現方法に変化を及ぼすことです。言葉中心だったモバイルコミュニケーションから、非言語へ、そしてより短時間で伝達する方法を極めることで、感情表現を新たに作り出したいと考えています」(山本氏)

 同氏のバックグラウンドである自動車のナビゲーションは、さまざまなデータを扱い、ルートやドライブの最適化を行ってきた。しかしコミュニケーションの面は深掘りされておらず、もっと取り組めるのではないか、と考えたという。

 一方で、人の状態を検知したり、自分の状態以外のステータスが反映されるという、ナビの時代の経験が、むしろ他のメッセンジャーとの差別化につながるかもしれない。

 例えば、AさんがBさんに、ランチに誘ったとする。しかしAさんはすぐに「NG」と返したとしよう。ただそれだけだと、Bさんは気を悪くするかもしれない。

 しかし、止まっている山手線の中に閉じ込められている、というAさんの置かれた状況が自動的に伝われば、Bさんは気を悪くするどころか、いたわりの反応を返すだろう。

 1秒のコミュニケーションを、さまざまなセンサーや情報がアシストする。そんな組み合わせの妙がなければ、腕だけでのコミュニケーションは難しいかもしれない。まずは言葉足らずを補うところから、NAINが果たす役割が始まるのではないか、と考えられる。

Watchアプリからのフィードバック

 Apple Watchに向けて、4月は2度のアップデートを予定しているNain。山本氏は、「ウェアラブル、ウォッチファースト」を念頭に、開発を進めている。

 「モバイルアプリは機能過多の傾向にあります。ウォッチでの体験を主体に、モバイルアプリがかけ離れないよう、気遣っています。スクリーンは小さいですが、常に腕にあることを生かすため、バイブレーションの使い方も重要です。

 歩いていたりすると着信を逃してしまうスマートフォンと違い、確実にメッセージが伝わることがメリットですが、メッセージの違いを腕で感じられる仕組みも新しい感覚になるのではないでしょうか」(山本氏)

 小さな画面のスマートウォッチを前提にすると、画面のデザインもより分かりやすい色や図形を利用し、また文字を極力少なくし、「一目で分かる」ことが重要になってくる。

 しかし、これは画面が大きなスマートフォンでも実現すべきデザインのルールになってくるはずだ。山本氏の気遣いは、今後より多くの開発者が経験し、意識するデザインやインタフェースの新しいトレンドになるのではないだろうか。

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