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» 2015年10月25日 06時00分 UPDATE

分身ロボット「OriHime」に込めた想い 開発者吉藤オリィさんが目指したもの

分身ロボット「OriHime」で目指したのは、AIでは実現できないコミュニケーション。開発者の吉藤オリィさんが考える、人とロボットの関係とは?

[ことばや/伊藤佳代子,ITmedia]
OriHime

 吉藤オリィさんが語る、分身ロボット「OriHime」開発に至る道のり。孤独の解消を人生の目標に掲げたオリィさんが、OriHimeに込めた想いとは、どんなものだったのでしょうか。

 不登校、引きこもりを経て、「人の役に立ちたい」という強烈な想いを抱いたオリィさん。世界最大の科学コンテストで第3位という栄誉を得た後、さまざまな人と接することになります。そして、気付いたこととは……。

本当に欲しいのは「モノ」ではなく「人」との触れ合い

吉藤オリィさん

 「ISEF(インテル国際科学技術フェア)での功績が新聞などで紹介されると、周囲の人から『こんなモノを作ってほしい』と依頼されることが増えました。そうした人たちの話に耳を傾けていて分かったのは、コミュニケーションの大切さです。例えば、こんな車いすがほしい、という人が本当に求めているのは車いすそのものではなく、自分が外へ出るきっかけだということ。そして、人と触れ合って会話をすることだと気付いたんです。コミュニケーションツールが必要だと、その時にひらめきました」(オリィさん)

 コミュニケーションの重要性は、自身の引きこもり体験から痛いほど分かっていました。誰とも言葉を交わさない日々が続くと、とっさに日本語が出てこなくなるのだと、オリィさんは言います。上手く話せないからますます引きこもってしまう悪循環。人に会いたくない。けれど、会いたい。そんな矛盾した気持ち。オリィさんが歩んできた道が、少しずつOriHimeを形作っていくことになります。

 「コミュニケーションツールと考えた時に、最初に思い浮かんだのはAIでした。その勉強をするために香川県の高専へ通ったのですが、研究を進めていくうちに、ふと疑問がわきました。自分にとって都合のいい友達、つまり、プログラムされた予定調和の会話をするロボットを作ったとして、それは本当の意味でコミュニケーションと呼べるのだろうか。孤独を解消することになるのだろうかと」(オリィさん)

 会話をする相手は誰でもいい訳ではない。家族や仲間とコミュニケーションが取りたい。そう考えた時、自分が求めているものはAIでは実現できないと、オリィさんは考えたのだと言います。

人は、必要とされ、生きがいを得てこそ癒される

 「例えば、ペットロボットは一時的な癒やしにはなり得るかもしれませんが、孤独を解消してくれるかといえば、そうは思えません。本物の生き物を飼うのであれば、世話を焼く必要があり、手間も暇もかかります。けれど、その生命を自分が守っているのだと思うこと。自分がその小さな命に必要にされていると自覚すること。それこそが、本当の癒やしであり、救いだと思うんです。ロボットでは人を癒せません。人は必要とされて、生きる実感を得られるのだと、私は思っています」(オリィさん)

 AIではなく、人と人をつなぐコミュニケーションツールを作ろう。オリィさんの中にひとつのイメージが浮かんでいました。

 「テレビ電話やSkypeでは何かが違うと思いました。画面越しに会話をすることと、私の考えるコミュニケーションの違いは何か、いろいろと考えた時、必要なのは、自分がそこにいる、という事実なのだと気付きました。その時、その場に一緒にいたという記憶は、いつまでも互いの心に残ります。先日、地元に帰った時に幼なじみと会ったのですが、久しぶり、と言うだけで打ち解けた気持ちになれました。それは、あの頃一緒にいたという記憶が私たちに共通してあるからだと思うんです」(オリィさん)

 遠く離れていても、一緒にいる。そう感じることができるコミュニケーションツールができたら……。オリィさんの中で、少しずつOriHimeがカタチを成していきます。

吉藤オリィさん

 「自分がそこにいる、という実感は孤独の解消にもつながると考えました。そうしたら、自分の分身となるロボットをツールにしてコミュニケーションができないか、と思い立ち、そこからイメージを広げていって、最初のOriHimeができました。OriHimeの第1号は人型だったんですよ」(オリィさん)

 人型だったOriHimeが、なぜ今のようなカタチに変わったのか。そして、OriHimeにオリィさんはどんな未来を託しているのか。次回、じっくりご紹介したいと思います。

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