分身ロボット「OriHime」に込めた想い 開発者吉藤オリィさんが見る未来とは

開発者が語る、分身ロボット「OriHime」の誕生秘話。ロボットと目と目を合わせて話すことの意味、そして未来へ託す想いとは。

» 2015年11月02日 06時30分 公開
OriHimeと吉藤オリィさん

 分身ロボット「OriHime」の誕生秘話と、未来の姿を追う本企画。開発者・吉藤オリィさんの想いが詰まったOriHimeはどうブラッシュアップされていったのでしょうか。

 オリィさんが歩いてきた人生のさまざまな出来事が、全てOriHimeにつながっていく。お話を聞くほどに、そんな想いが強くなっていきました。そして、OriHimeはオリィさんだけでなく、いろいろな人の想いを取り込んで、どんどんカタチを変えていくことになるのです。

「目は口ほどにものをいう」はロボットにも通じる

 「なぜ人型のOriHimeをやめたのかというと、そこから読み取れる情報が多すぎたんです。例えば、足があれば、立ち方1つ、座り方1つでそのロボットの性格を表すことができますが、逆にコミュニケーションに集中できないのではと思いました。そこで、全部取っ払ってみたんです。顔と上半身だけのシンプルなカタチにしたら、不思議と無表情なはずのロボットの顔に表情が見えるようになりました。話をしている相手の顔が見える。そんな感じです」(オリィさん)

吉藤オリィさん

 コミュニケーションの中で、相手の顔が見えるというのはかなり重要なファクターだとオリィさんは言います。同じ言葉を使っていても、面と向かって話をするのと、メールで伝える場合、電話で話す場合、相手に与える印象は同じだとは限りません。誤解を生むこともある。実際にそんな経験をされたことがある人も少なくないでしょう。

 「目と目を合わせて話すのは、とても大切だと思います。だから、OriHimeは首が自由に動くようにして、話をしている相手と、視線が合う感覚を大事にしました。操作をしている側はもちろんですが、分身であるOriHimeと会話をしている側に、きちんと目を合わせていることを感じてほしかったんです。それが、一緒にここにいる、という存在感につながるだろうと思いました」(オリィさん)

 最終的に手を付けたのは、感情表現をもう少し豊かにしたかったからなのだとか。手を動かすだけで、喋らなくてもコミュニケーションが取れる。そうした言葉だけじゃないやりとりも、1つの会話だと、オリィさんは考えているのです。

OriHimeは心の車いす 外へ出る最初の一歩に

 OriHimeはこれまでの、効率化や便利さの追求を目的としてきた従来のロボットとは真逆にある、と話すオリィさん。無駄と思えることこそが日常であり、そこに大切なものがあるのだといいます。

 「ミーティングなど目的のあるコミュニケーションなら、テレビ電話やSkypeで事足ります。OriHimeとするコミュニケーションは、雑談です。何か用事があってするものではなく、例えば、家族がリビングに集って何となくおしゃべりをする。友達同士が休み時間に昨日見たテレビの話をする。必然性はないけれど、日々、普通に交わされている会話。それこそが、孤独を感じている人に必要なコミュニケーションなのではないかと」(オリィさん)

 目的のある会話なら、これまでにあるコニュニケーションツールを使えばいい。OriHimeは、仲間や家族の中に自分が一緒にいる。そう感じるコミュニケーションを生み出すツールなのだと、あらためて知らされました。

 「私は、ずっとOriHimeを使ったコミュニケーションだけでいいとは思っていません。車いすの話と一緒で、外に出て実際に人と触れ合うきっかけに、最初の一歩になればいいと思っています。特に、引きこもり中の人は、誰かと会ったり話したりしたくても怖くてできなかったりします。そんな時、まずはOriHimeを介して人の中に飛び込んでみる。そして、少しずつでもその環境に慣れ、時間がかかってもいつかは自分自身がその中へ入っていけるよう、その手助けをするのがOriHimeだと思ってもらえればいいと思います」(オリィさん)

OriHimeの未来

 そんなオリィさんは、これからどのようにOriHimeを進化させていくつもりなのでしょうか。

 「OriHimeは人によってその使い方はさまざまで、それこそ、100人いたら100通りの使い方があるのだと思います。だから私は、使う人それぞれの事情や要望にできる限り対応していきたいと考えています。ビジネスライクにOriHimeを量産するのではなく、使う人それぞれに合うカスタマイズされたOriHimeを提供していけたらうれしいですね」(オリィさん)

OriHimeと吉藤オリィさん

 自分の分身がいる、というのは何ともクールでSFチックなイメージをかき立てますが、実際にOriHimeのある世界は、とても優しく、心を温かくしてくれるものでした。オリィさんが目指す「孤独の解消」となる分身ロボットOriHimeの今、そしてこれからを、見守っていきたいと思います。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

昨日の総合アクセスTOP10
  1. /nl/articles/2404/25/news016.jpg 「電車の中で見ちゃダメ」「笑ったww」 実家からLINE「子ヤギがすばしっこくて捕まらない」→送られてきた衝撃姿が320万表示!
  2. /nl/articles/2404/23/news090.jpg 誰も教えてくれなかった“裁縫の裏ワザ”が目からウロコ 200万再生のライフハックに「画期的」と称賛【海外】
  3. /nl/articles/2404/21/news011.jpg 小1娘、ペンギンの卵を楽しみに育ててみたら…… 期待を裏切る生き物の爆誕に「声出して笑ってしまったw」「反応がめちゃくちゃ可愛い」
  4. /nl/articles/2404/25/news043.jpg 娘の給食の献立表を見たら…… 正体不明の“謎の料理名”が「これはわからんw」と話題に その意外な正体に納得!
  5. /nl/articles/2404/25/news129.jpg プロ野球チップスでまた“不良品”流出 伊藤大海「176m」表記に続き…… カルビー謝罪「深くお詫び」
  6. /nl/articles/2404/24/news018.jpg 1年半ケージに引きこもっていたシャーシャー猫が、ある夜布団に入ってきて…… 感涙の行動に「まるで別猫」「こんな日が来るなんて」
  7. /nl/articles/2404/24/news017.jpg メルカリで300円の紙モノセットを買ってみたら…… 出品者のあたたかな心遣いに「利益は考えていないんでしょうね」「見ててわくわくします」
  8. /nl/articles/2404/23/news185.jpg 子どもに高級キーボードのパーツを捨てられた → 公式の“先読みしすぎた対応”が話題「そういうこともあろうかと」
  9. /nl/articles/2401/18/news015.jpg 巨大深海魚のぶっとい毒針に刺され5時間後、体がとんでもないことに…… 衝撃の経過報告に「死なないで」
  10. /nl/articles/2404/22/news124.jpg ダイソー「マルチ万能ほうき」が家事ラクの救世主 名前負け知らずの便利さに「これやばっ!!」「220円に驚き」の声
先週の総合アクセスTOP10
  1. 小1娘、ペンギンの卵を楽しみに育ててみたら…… 期待を裏切る生き物の爆誕に「声出して笑ってしまったw」「反応がめちゃくちゃ可愛い」
  2. 富山県警のX投稿に登場の女性白バイ隊員に過去一注目集まる「可愛い過ぎて、取締り情報が入ってこない」
  3. 2カ月赤ちゃん、おばあちゃんに少々強引な寝かしつけをされると…… コントのようなオチに「爆笑!」「可愛すぎて無事昇天」
  4. 異世界転生したローソン出現 ラスボスに挑む前のショップみたいで「合成かと思った」「日本にあるんだ」
  5. 【今日の計算】「8+9÷3−5」を計算せよ
  6. 21歳の無名アイドル、ビジュアル拡散で「あの頃の橋本環奈すぎる」とSNS騒然 「実物の方が可愛い」「見つかっちゃったなー」の声も
  7. 1歳赤ちゃん、寝る時間に現れないと思ったら…… 思わぬお仲間連れとご紹介が「めっちゃくちゃ可愛い」と220万再生
  8. 業務スーパーで買ったアサリに豆乳を与えて育てたら…… 数日後の摩訶不思議な変化に「面白い」「ちゃんと豆乳を食べてた?」
  9. 祖母から継いだ築80年の古家で「謎の箱」を発見→開けてみると…… 驚きの中身に「うわー!スゴッ」「かなり高価だと思いますよ!」
  10. 「ゆるキャン△」のイメージビジュアルそのまま? 工事の看板イラストが登場キャラにしか見えない 工事担当者「狙いました」
先月の総合アクセスTOP10
  1. フワちゃん、弟の結婚式で卑劣な行為に「席次見て名前覚えたからな」 めでたい場でのひんしゅく行為に「プライベート守ろうよ!」の声
  2. 親が「絶対たぬき」「賭けてもいい」と言い張る動物を、保護して育ててみた結果…… 驚愕の正体が230万表示「こんなん噴くわ!」
  3. 水道検針員から直筆の手紙、驚き確認すると…… メーターボックスで起きた珍事が300万再生「これはびっくり」「生命の逞しさ」
  4. フワちゃん、収録中に見えてはいけない“部位”が映る まさかの露出に「拡大しちゃったじゃん」「またか」の声
  5. スーパーで売れ残っていた半額のカニを水槽に入れてみたら…… 220万再生された涙の結末に「切なくなった」「凄く感動」
  6. 桐朋高等学校、78期卒業生の答辞に賛辞やまず 「只者ではない」「感動のあまり泣いて10回読み直した」
  7. 「これは悲劇」 ヤマザキ“春のパンまつり”シールを集めていたはずなのに…… 途中で気づいたまさかの現実
  8. 「ふざけんな」 宿泊施設に「キャンセル料金を払わなくする方法」が物議 宿泊施設「大目に見てきたが厳格化する」
  9. がん闘病中の見栄晴、20回以上の放射線治療を受け変化が…… 「痛がゆくなって来ました」
  10. 食べ終わったパイナップルの葉を土に植えたら…… 3年半後、目を疑う結果に「もう、ただただ感動です」「ちょっと泣きそう」