コラム
» 2015年11月08日 06時00分 UPDATE

「ハンドル握るとひょう変」は姿勢のせい?座る姿勢を科学する

[ITmedia]

 脳科学者の澤口俊之氏は「運転時に人の性格が変わるのには、座り方が関わっているのかもしれない」という説を提唱しています。もちろん、この現象が起こる理由にはさまざまな要因が考えられるでしょうから、推測の1つということになりますが、澤口氏は同時に「座る姿勢と脳の働きが関係していることは確か」だとも言っています。

運転すると性格が変わるのは姿勢のせい?座る姿勢を科学する

 さて、私たちの生活には欠かせない「座る」という行為は、健康上はどのような行為と考えられるのでしょうか。

「座ることは脳に悪い」という研究結果

 2011年4月14日付のWeb版『The New York Times Magazine』には「座ることは死を招く行為なのか?」という記事がアップされています。この中では、人が1日中微動だにせずに座り続けた場合、筋肉の代謝量が著しく低下し、メタボのリスクが大幅に高まると書かれています。

 ペニントン生物医学研究所のマーク・ハミルトン氏いわく、「筋肉は死んだ馬のようにびくともしなくなっていく」。この原因の1つにはインスリンの働きの著しい悪化が挙げられます。インスリンは膵臓から分泌され、脳において摂食や代謝量の調節、記憶や学習、脳の神経細胞発達にまで影響するといわれるホルモンです。ニューヨークタイムズ紙が選んだ「Is Sitting a Lethal Activity?」という記事のタイトルはあながち大げさではないのです。

「いい座り方」とはなにか?

 しかし現代の日本人が「座らない」という選択をすることはほとんど不可能です。デスクワーカーなら1日のほとんどを座って過ごすのが当たり前でしょう。そこで澤口氏はその前提を踏まえた上で、「座り方次第で、リラックスもできれば集中力を高めることもできる」と語っています。

 座り方によって脳の血流量が変化することは分かっているため、それを利用して集中力が高まる座り方や、より想像力が高まる座り方、あるいはそれらの機能を持った椅子を開発できるはず。澤口氏の「座る姿勢」についての言葉は、デスクワーカーにとってはとても希望の持てる話です。

注目したい「座る姿勢の科学」

 私たちは仕事中に座ります。あるいは仕事帰りの電車でも「座りたいなあ」と思うでしょう。あるいは上司の愚痴を同僚と言い合う飲み屋でも、きっと座っているはずです。世界中で最先端の技術が生まれる現場でも人々は座っていて、座っているからこそコミュニケーションがとれるという場面もあるでしょう。

 ハーマンミラー社が開発した多機能デスクチェア「アーロンチェア」のデザインは最新の人間工学に基づいてデザインされたものです。あるいはトヨタ自動車のコンセプトカー「i-unit」のデザインを担当した根津孝太氏は、椅子を一種のインタフェースだと言います。私たちはまだまだ「座る姿勢」について考えきれていないのです。どんどん面白くなる「座る姿勢の科学」。これから目が離せない分野になりそうです。

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