キーワードは「Always On」 2015年のウェアラブルを振り返る“ウェアラブル”の今(1/2 ページ)

2015年のウェアラブルデバイス市場は、常に「Apple Watch」が話題の中心にあったが、「Always On」という観点で見るとApple Watchもまだ不十分だ。ウェアラブルの活用はどんなシーンで進むのだろうか。

» 2015年12月26日 06時00分 公開
[松村太郎ITmedia]

 あれよあれよという間に年末になってしまった。皆さんにとって2015年はどんな年だっただろうか? 筆者は本連載でウェアラブルについて「体験的に記す」非常に良い機会を頂くことができ、大変うれしく思っている。さまざまなデバイスやサービスを試すことができ、またそれに伴って考える機会もたくさんあった。

 2011年にJawboneがリリースしたUPに触れてから、スマートフォンと組み合わせて利用するウェアラブルデバイス市場がメインストリームの入り口へ向かうまでに4年が経過した。これを長いと見るか、短いと見るかは、意見が分かれるところだ。

 今回は、2015年のウェアラブル市場についての振り返りと、意識してきたキーワードである「Always On」をテーマに、考えていこう。

Apple Watchの1年

Apple Watch Apple Watch

 2015年のウェアラブル市場は、「モバイルデバイスを製造するトップブランドであるAppleの参入」という、分かりやすいきっかけを目の当たりにすることができた。

 Appleは「Apple Watch」で、iPhoneの魅力を高めること、そしてiPhoneで用いているテクノロジーやビジネスモデルを活用すること、という堅実な2点をおさえる戦略を採った。同時に、Apple Watchは、インタフェイースデザインや高級路線の強化という面で、iPhoneを含むAppleの製品全体をリードする役割を担うことにもなった。

 ウェアラブル向けの新しいデザインとブランドが、Appleの主力製品を従える図は、少し意外な出来事と受け取ったのは筆者だけではないだろう。新しいデバイスには新しいデザインが必要で、そのことに前向きに取り組む姿勢は、同時にモバイルデバイス全体に対する、やや強めのフィードバックとして現れたのだ。

 もう1つ意外な点は、汎用性の高いApple Watchを始めとするスマートウォッチが、必ずしもウェアラブルデバイス全体のメインストリームを取り切れているわけではない点だ。

いくつかの調査を参照すると、Apple Watchは、2015年4月に発売され、9月末までに700万台ほどが販売されたと見られている。恐らく、10月から12月までのホリデーシーズンを含む四半期を通じて、さらに販売台数が上乗せされ、2015年中の販売台数は1000万台を軽く上回る程度には売れただろう。

訴求しきれないウェアラブル

 もちろんApple Watchはスマートウォッチのカテゴリーではダントツだが、それ以上の台数を販売しているのはFitBitのアクティビティトラッカー(活動量計)だ。このことは、ウェアラブル市場全体で、まだキラーアプリを模索している段階にあることを意味している。

 Apple Watchがトップを取れない理由は、3つある。最低でも349ドルという価格の高さ、Androidユーザーが利用できないという条件、そして「スマートウォッチが生活の中になぜ必要なのか」について完全に説明できる段階にない、という3点だ。

 Apple自身も、Apple Watchのキラーアプリに日々の運動の計測を挙げてきた。

本連載でも、Appleでヘルスケア機能についての開発をとりまとめるジェイ・ブラニック氏へのインタビューで触れた通り、Appleはヘルスケアに関するラボを作り、デザイン面での工夫にも余念がない。しかしそれは、現存するアクティビティトラッカーという可能性を、汎用デバイスを用いて、Appleブランドでより押し広げただけなのだ。

 繰り返し指摘してきた通り、常に身に着けるデバイスによって収集されたデータは、自分が意識せずにとってきた行動を可視化し、どのような意味があるのかを数字にして伝えてくれる。それによって行動を変え、より良い生活を手に入れるためのきっかけを手にすることが、現在のウェアラブルデバイスの、我々の生活への役立ち方なのだ。

 健康的な生活は人類にとって、皆の願いではあるものの、必ずしも中長期の視点での投資に全員が取り組んでいる状況ではない。ウェアラブル市場の訴求も、これに近いのではないか、と考えるようになった。

「Always On」の今

 筆者は2015年、いくつかのサービスで使われていた「Always On」というフレーズが印象に残っているので紹介したい。例えば米国では、24時間365日放送しているストリーミング放送やラジオ局などで使われている。Appleが定額制音楽サービス「Apple Music」の目玉の1つとして開局した、「Beats 1」のキャッチフレーズにもなっていた。

 ウェアラブルデバイスは、デバイスとしてはAlways Onなものになっていくだろう。Apple Watchは毎晩充電しなければならないため、残念ながらAlways Onにはなっていないが、例えばMISFIT「SHINE 2」は、ボタン電池で6カ月間、運動から睡眠までのデータを取り続けてくれる優れもので、こちらのデバイスはAlways Onの状態を完全に実現してくれているのだ。

Apple WatchとMISFIT SHINE 2 Apple WatchとMISFIT SHINE 2

 もちろんディスプレイを搭載し、情報の入力や表示を行う汎用性があるApple Watchと、人の動きを検知し続けるだけのSHINE 2を比較するのは酷かもしれない。しかし生活にプラスして変化を作り出そうとするApple Watchに対して、SHINE 2はいかに自分の生活を変えず、自分のことを深く知るためのデータを得るか、というアプローチだ。

 SHINE 2は睡眠の記録を付けることができるが、これもAlways Onの効能ということになる。

 現在のBluetooth LEの省電力性は、後者について、Always Onを実現するには十分な技術に発展したと見ることができる。Apple Watch的なデバイスについても、Always Onを実現できるバッテリーライフを手に入れることを期待している。

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