スマートウォッチは今後どうなる? Apple Watch、FitBit Blaze、TAG Heuer Connectedから考える:“ウェアラブル”の今
2015年から、目に見えて市場が拡大しているスマートウォッチ。その進化の方向性には、大きく3つの流れがあるように見える。
IDCが2月26日に発表したウェアラブル市場のデータによると、2015年、世界のウェアラブルデバイスの出荷台数の合計は、7810万台だった(Buesiness Wire)。2014年と比較すると1.7倍の規模に増加したことになる。
トップ企業はFitBitで、販売台数は2100万台、2位はXiaomiで1200万台。それぞれ93.2%、951.8%の増加となり、市場拡大とともに成長していることが分かる。そして第3位が、2015年4月に「Apple Watch」を発売したApple。2015年中の販売台数は1160万台だった。
また、2015年第4四半期、10月から12月のホリデーシーズンで見てみると、FitBitは810万台、Appleは410万台を販売し、この2社で市場の約45%を占めた。FitBitは、よりスマートウォッチとしての機能を高めた「Blaze」を米国で投入しており、199ドルという価格も魅力的だ。
スマートウォッチに見られる3つの方向性
スマートウォッチは2016年、さらに活況な市場となるはずだ。ただし、スマートウォッチの中でも、分類が進んでいくことになるだろう。
スマホメーカーのスマートウォッチ
1つは、スマートフォンメーカーがリリースする一連のデバイスだ。
Apple WatchやAndroid Wear搭載スマートウォッチは、スマートフォンとの深い連携によって、時間の確認をスマホで済ませていた若い世代から、エクササイズやスケジューリングなどのアプリの機能を求めて使う人々といった、「新しい時計ユーザー」をカバーすることになる。
AppleはApple Watchの初期のキラーアプリとして、「アクティビティ」を用意した。本連載でも責任者のジェイ・ブラニック氏にインタビューを実施したが、新たにラボまで新設し、Apple Watchによる活動量の計測を研究するほどに力を入れている分野だ。分かりやすい進展状況表示のデザインにもこだわり、毎日時計を着けてもらうための“習慣”作りに取り組んでいる。
本連載でも繰り返し述べている通り、こうしたスマホメーカーのスマートウォッチの役割は明確だ。現在使っているスマートフォンとの組み合わせで最も高い性能を発揮するよう設計し、そのデバイスを身に着けることで、ブランドへのロイヤリティを高めようという考えだ。
iOSのスマートフォンとして現存するのはiPhoneだけで、そのiPhone専用のスマートウォッチとして設計されているApple Watchが、前述のアイデアを最も忠実に再現しており、それがスマートウォッチ市場で大きなシェアを集めている点は、iPhoneにとって好感すべき内容と言える。
スポーツトラッキング主体のスマートウォッチ
スマートフォンメーカーではない、ウェアラブルデバイスを主力とするメーカーが作るのは、必ずしもスマートウォッチである必要はない。FitBitはウェアラブルデバイス市場で最も成功しているが、Apple Watchのようなアプリによる拡張が可能なスマートウォッチをゴールにしなくても、「スポーツトラッキング」という機能の充実によって、その価値を発揮できるのだ。
しかしスマートウォッチへの進出の動きは加速している。時計としての役割や、より高い機能を提供しようと考えると、大きめのディスプレイを用いた文字盤を備え、より多くのセンサーを内蔵する時計型のデバイスが現実的な選択肢となる。こうした背景からも、スマートウォッチ型のデバイスの増加が見込まれる土壌が形成されている。
機能としては、加速度センサーを生かした活動量、運動強度、睡眠の計測、そして心拍センサーを活用した心拍数の計測が主流となっており、計測できるスポーツの種類によって差別化することになるかもしれない。自転車のケイデンスなどは、ケイデンスセンサーとの連携機能を備えるなど、スマートウォッチを起点に他のデバイスの情報を収集する仕組みも魅力的だろう。
また、日々の生活の中での運動以外の活動計測についても、チャレンジしてほしい部分だ。
日本人にとって人気が出るかもしれない機能は、入浴についてではないだろうか。温度や長さは人それぞれの好みではあるが、例えば美容や健康に効果的な入浴をガイドしてくれる機能などは、ウェアラブルデバイスの購入層を広げてくれる可能性もある。また、入浴にも関係あるが、体温の計測も、健康管理に活用できるだろう。
時計メーカーのスマートウォッチ
最後に、時計メーカーが取り組むスマートウォッチだ。TAG Heuerやカシオ計算機、Fossilなどの時計メーカーが積極的にスマートウォッチに取り組んでいる点は、2015年の動きとして興味深かった。2016年も引き続き、時計メーカーの時計らしいスマートウォッチの登場に期待したいところだ。
時計メーカーとしては、スマートフォンメーカーのスマートウォッチとの間で、手首の取り合いをする必要がある。スマートウォッチは習慣的に身に着けてもらうことを目指している。おそらく1人の人が同時に装着する腕時計は1つだけだ。
高級なブランドほど、スマートウォッチによる影響をすぐには受けないだろう。実用性はもちろんだが、ファッションとしての側面について、現在のスマートフォンメーカーのスマートウォッチが代替できるほどに成熟しているとは言えないからだ。しかし前述の習慣性は、時計メーカーの時計を実際に身に着ける頻度、ひいては購入するかどうかの判断にまで影響する。
時計メーカーのスマートウォッチでも、どの部分にデジタルを介在させるか、という方法論が存在する。全面デジタルの文字盤にして、これまでのアナログ時計のデザインを踏襲する方法もあれば、アナログ時計のデザインをそのままにしながらバッテリーによる駆動に変更する方法、そしてムーブメントはそのままにし、時計の中にデジタル機能を埋め込む方法だ。
個人的に時計メーカーに期待するのは、最後のパターン、既存のムーブメントやデザインの中にデジタル機能、すなわちモーションセンサーやバイブレーター、Bluetooth通信モジュールを搭載し、スマートフォンと連携できるようにするタイプだ。
テクノロジートレンドとの融合への期待
スマートウォッチは、いかなるタイプであっても、基本機能は似たものになっていく。タイマーやカレンダーを含む時計としての機能各種、スマートフォンとの連携、活動量などの計測が、それにあたる。
もちろん筆者は、時計の魅力が機能だけで作られるわけではないと考えているため、アプリだけが魅力を作る要素とは言えない。ただ機能面でのスマートウォッチを考えれば、当然、Apple WatchやAndroid Wearのように、アプリを追加することができるデバイスが有利になっていくことは間違いない。
その中でも、2016年は、人工知能を活用したアプリの増加に期待している。スマートウォッチは画面が限られており、かつ文字などの入力手段はスマートフォンのようには快適に行えない。そこで、極力入力しない、スマホを使わないで、目的を達成できる仕組みが重要になる。
コミュニケーションでは絵文字やスタンプといった、非言語の記号やイラストを活用する方法は有効だ。そして、スケジュール調整や店舗検索などで役立ってくれる可能性があるのが人工知能ではないか、と考えている。
この機能の深化については、改めて考えていきたい。
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