歯周病が全身疾患を引き起こす――専門医が語る“本当の怖さ”と対策(1/2 ページ)

かつて「歯槽膿漏」(しそうのうろう)と呼ばれた歯周病だが、「もはや国民病といっても過言ではない」状況にあると専門医は指摘する。しかも症状が進むと全身疾患にもつながるという。歯周病の実態と対策とは?

» 2016年08月19日 15時01分 公開
[芹澤隆徳ITmedia]
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 フィリップスが歯周病予防のために開発した新しい電動歯ブラシ「ソニッケアー ガムヘルス」。8月18日に都内で行われた発表会では、誠敬会クリニック内科・歯科の田中真喜理事長が登壇し、専門医の立場で歯周病の実態を語った。

誠敬会クリニック内科・歯科の田中真喜理事長。歯周組織再生療法とインプラント治療のスペシャリストで、歯科治療の傍ら、国内外での講演活動や専門書の執筆も行う

 歯周病は、かつて「歯槽膿漏」(しそうのうろう)と呼ばれた腔内疾患だ。原因は細菌感染で、症状としては「歯茎から血が出る」「歯茎が下がってくる」「口臭」など。そして重症になると歯がグラグラしたり、抜け落ちたりしてしまう。

歯周病の進行と症状

 中高年の病気というイメージもあるが、症状が軽いケースも合わせると決してそうではない。日本の歯周病患者は、子どもの40%、学生の72%、成人は84%、高齢者の68%に及ぶという(平成23年 厚生労働省 歯科疾患実態調査より)。

 「もはやこれは国民病といっても過言ではないと感じています」(田中氏)

出典は「平成23年 厚生労働省 歯科疾患実態調査」

 しかし、平成26年に継続して歯周病の治療を受けている人は331万5000人(推定)と人口のわずか2.6%しかいない。「こんなに少ない状況には理由があります。Silent Disease……つまり高血圧などと同様、歯周病も自覚症状がないままに静かに進行する病気だから。ちょっと症状が出ても日常生活に困らないと病院には行かない人が多く、受診率の低さにつながってしまっています」

 口の中には歯周病を引き起こす細菌が「うようよいる」と田中氏。歯ブラシのCMなどでよく耳にする「プラーク」は“食べかす”と勘違いしやすいが、実は「細菌のかたまり」で、その表面にはデンタルバイオフィルムと呼ばれるシールドを作ってしまうため、しっかりこすり落とさないと除去することはできない。そしていずれ「歯石」になってしまう。

 さらにやっかいなことは、歯周病が進行して歯と歯ぐきの間で細菌が繁殖しても外からは見えず、「まるで坂道を転げ落ちるように悪化する」ことだ。歯周病が進行した患者を診察すると「歯の根っこの表面に歯石として(細菌のかたまりが)ぺたっとくっついています。歯周病細菌の栄養源は血液中の鉄分。歯周ポケットに潰瘍(かいよう)を作って栄養源を確保します」。1本の歯は小さいが、何本もの歯の周囲に潰瘍ができたとしたら……重症患者の場合、すべての潰瘍を合わせた面積が約72cm2におよび、それは「手のひらと同程度になる」という。

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