「Google Glass」が失敗した理由と「Snapchat」が次に目指す場所(2/2 ページ)

» 2016年10月16日 06時00分 公開
[松村太郎ITmedia]
前のページへ 1|2       

 メガネにレンズをつけるアイデアは、Googleが「Google Glass」で実現したスタイルだ。そのため、必ずしも新しさを感じるものではない。もちろん、新しいガジェットが重要なわけではない。

 というのも、Google Glassは未来的なガジェットであったが、何を表示するか、そして何を撮影するか、という「サービス」がなかったこと、そしていくら何でも高すぎたことから、既にその存在感が消えつつある。ちなみにGoogleは10月4日のイベントで、Daydream Viewを発表し、VR体験を楽しむ方向へとシフトした。

 Spectaclesは、Snapchatというサービスを前提に作られている。撮影された10秒のビデオは、スマホが縦でも横でも、画面いっぱいに表示される仕組みを実装し、カメラがついていない方の左端には、撮影中は白いLEDのランプが灯る。

 こうして、友人と楽しんでいるとき、自分がいる場所などを、直接Snapchatアプリに送り込んで、すぐに友人に送ったり、メモリとして公開できる仕組みを作り上げた。「カメラ会社」を名乗るSnap Inc.としては、スマホを構えず撮影できる点で、新しいカメラを打ち出せるのではないだろうか。

 Spectaclesはウェアラブルカメラと分類できる。アクションカメラなど、身につけてアクティビティーをする際に便利なカメラは既に存在している。こうしたウェアラブルカメラについては、最近悲しいニュースがあった。それはNarrative Clipの販売とサービスの終了だ。

 Narrative Clipは、襟などに装着して、30秒に1枚のペースで写真を記録してくれるカメラだった。いわゆるライフログの系譜から生まれており、撮影した画像をあとから分類して見ることで、写真撮影の煩わしさや撮り逃しを防ぐというアイデアだった。

 製品を販売してからは継続的にサーバのコストが掛かり続け、ビジネスモデルが発展しなかった点、そしてスマートフォンのカメラのさらなる高画質化から、自動的に記録してくれるカメラのメリットが薄れてしまった点が、サービス終了の原因だと考えられる。

 Narrative Clipも、Snapchat以前のストックを前提としたアイデアから出発している点で、時代遅れになってしまった、と捉えられるだろう。

ウェアラブルとフロー

 この瞬間を刹那に楽しむことへの興味をかなえてくれるのがSnapchatだ。

 若者が今後、自分の情報を丁寧に蓄積し、関係性を重ねて行くことに価値を見いだすかもしれない。過渡期ともいえる当面は、例えばキャリアを意識したり、自分のプロジェクトを持つようになると、ストック寄りの志向が強まるのではないだろうか。

 Snapchatがメモリ機能を用意したのも、Snapchatユーザーが成長するにつれてストックへの興味を持つならば、それを満たす機能を入れよう、という戦略的な意味合いも透けて見える。

 しかし、彼らが経験した、フローの情報を扱う感覚は、失われないだろう。Spectaclesは、そうしたフローの情報を扱える人々のためのウェアラブルカメラとして、支持を集めることになると予測している。

 ウェアラブルデバイスは、特定の目的や最小限の機能を備えたものが多い。その理由は、身につけるためできるだけ小さくしなければならないからだ。より状況に応じた機能を発揮することが求められ、もし情報を扱う場合、フローの感覚が、ヒットを呼ぶヒントとして考えられる。

 Spectaclesの成否は、Snap Inc.の新しい戦略の正しさだけでなく、ウェアラブルデバイスの方向性を占う意味でも、注目していくべきだろう。

前のページへ 1|2       

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

先週の総合アクセスTOP10
  1. 小1娘、ペンギンの卵を楽しみに育ててみたら…… 期待を裏切る生き物の爆誕に「声出して笑ってしまったw」「反応がめちゃくちゃ可愛い」
  2. 富山県警のX投稿に登場の女性白バイ隊員に過去一注目集まる「可愛い過ぎて、取締り情報が入ってこない」
  3. 2カ月赤ちゃん、おばあちゃんに少々強引な寝かしつけをされると…… コントのようなオチに「爆笑!」「可愛すぎて無事昇天」
  4. 異世界転生したローソン出現 ラスボスに挑む前のショップみたいで「合成かと思った」「日本にあるんだ」
  5. 【今日の計算】「8+9÷3−5」を計算せよ
  6. 21歳の無名アイドル、ビジュアル拡散で「あの頃の橋本環奈すぎる」とSNS騒然 「実物の方が可愛い」「見つかっちゃったなー」の声も
  7. 1歳赤ちゃん、寝る時間に現れないと思ったら…… 思わぬお仲間連れとご紹介が「めっちゃくちゃ可愛い」と220万再生
  8. 業務スーパーで買ったアサリに豆乳を与えて育てたら…… 数日後の摩訶不思議な変化に「面白い」「ちゃんと豆乳を食べてた?」
  9. 祖母から継いだ築80年の古家で「謎の箱」を発見→開けてみると…… 驚きの中身に「うわー!スゴッ」「かなり高価だと思いますよ!」
  10. 「ゆるキャン△」のイメージビジュアルそのまま? 工事の看板イラストが登場キャラにしか見えない 工事担当者「狙いました」
先月の総合アクセスTOP10
  1. フワちゃん、弟の結婚式で卑劣な行為に「席次見て名前覚えたからな」 めでたい場でのひんしゅく行為に「プライベート守ろうよ!」の声
  2. 親が「絶対たぬき」「賭けてもいい」と言い張る動物を、保護して育ててみた結果…… 驚愕の正体が230万表示「こんなん噴くわ!」
  3. 水道検針員から直筆の手紙、驚き確認すると…… メーターボックスで起きた珍事が300万再生「これはびっくり」「生命の逞しさ」
  4. フワちゃん、収録中に見えてはいけない“部位”が映る まさかの露出に「拡大しちゃったじゃん」「またか」の声
  5. スーパーで売れ残っていた半額のカニを水槽に入れてみたら…… 220万再生された涙の結末に「切なくなった」「凄く感動」
  6. 桐朋高等学校、78期卒業生の答辞に賛辞やまず 「只者ではない」「感動のあまり泣いて10回読み直した」
  7. 「これは悲劇」 ヤマザキ“春のパンまつり”シールを集めていたはずなのに…… 途中で気づいたまさかの現実
  8. 「ふざけんな」 宿泊施設に「キャンセル料金を払わなくする方法」が物議 宿泊施設「大目に見てきたが厳格化する」
  9. がん闘病中の見栄晴、20回以上の放射線治療を受け変化が…… 「痛がゆくなって来ました」
  10. 食べ終わったパイナップルの葉を土に植えたら…… 3年半後、目を疑う結果に「もう、ただただ感動です」「ちょっと泣きそう」