うつ病をゲーム「Ingress」で克服 ポケモンGO生みの親も祝福(1/3 ページ)

うつ病になり、半年間1歩も外にでられなかった日々。立ち直るきっかけとなったのは、位置情報ゲーム「Ingress」でした。

» 2016年11月06日 06時00分 公開
[すずまりITmedia]

 「彼は、Ingressのおかげでうつ病が克服できたんだそうです」

 そんなせりふを聞いたのは、半年前のとあるIngressイベントでのことでした。

 Ingressとは、Pokemon GOのベースにもなったスマホでプレイする位置情報ゲーム。2016年4月には、東北に人を集めるためのイベント「Initio Tohoku Mission」が福島県相馬市で行われ、開発元の米ナイアンティック社CEOであるジョン・ハンケ氏をはじめとしたスタッフたちも参加しました。

 イベント開催当日、相馬駅の脇にあるカフェ「志緒里」で、ハンケ氏を取材していたときのこと。カフェから一行が外に出ようとすると、出口に長身の男性が立っていました。

イベントで偶然見かけた、あるエージェントとハンケ氏のやりとり

カフェ「志緒里」の出口前に立つ男性の姿が。撮影も本当に偶然でした

 どこでも気さくに写真撮影に応じるハンケ氏は、そこでも彼と写真を撮りました。握手をしながら彼が日本語でハンケ氏に話しかけます。通訳を務めた同行スタッフが、ハンケ氏に伝えました。

 「彼は、Ingressのおかげでうつ病が克服できたんだそうです」

 それを聞いた瞬間、ハンケ氏の表情がパッと明るくなり「よくここまでがんばったね! おめでとう!」といわんばかりに満面の笑みをたたえながら、あらためて自ら力強く彼の手を握り返しました。

 そのときは特に声を掛けることもなく、名前も知らないまま写真だけ撮影して終わりましたが、その後東京を舞台に開催されたイベントの準備中に、偶然再会。詳しい話を伺うことにしたのです。

写真撮影に応じるハンケ氏
握手をしながら話しかけるMさん
通訳の話に耳を傾けるハンケ氏
話を聞いた瞬間、ハンケ氏のほうからMさんに握手を求めました
Mさんに笑顔で語りかけるハンケ氏。Mさんはひたすら照れていた様子

上司による人格攻撃がエスカレート、重いうつ病に

 Mさんは現在の会社に新卒で入社し、16年間勤務していました。仕事も人間関係も良好だったといいます。その後、業務の都合で東京を離れることになり、1年後再び東京の事務所に戻りました。しかし、新しい環境では接する人もがらりと変わってしまいました。

 上司も変わりました。この上司が徐々にMさんを目の敵にし始めます。

 「新しい上司と合わなかったみたいで、私に対する人格攻撃がどんどんひどくなっていきました。何か問題があったとき、個別に呼んでいえば済むようなことでも、ほかの社員がみんな見ている前で、わざと名指しで罵倒するようになったんです。それがあまりにひどくて。最初は我慢していたんですが、気が付くと、会社に行くと吐き気を覚えるようになっていました」

 やがて、トイレにこもりっきりになる日が出てきたといいます。会社の健康管理室がMさんの異変に気付き、産業医との三者面談を行うことに。Mさんを診察した産業医は、その場で「あなたは既に重いうつ病だから、今この瞬間から会社に行かなくていいですよ」と言ったそうです。2013年頃のことでした。

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