「万人に効く睡眠の特効薬」はあるか? 人工知能マットレス「MOORING」ができるまで(1/2 ページ)

» 2016年12月16日 06時00分 公開
[杉本吏ITmedia]

 2016年は、日常生活のあらゆるモノがインターネットにつながる=IoT(Internet of Things)の流れがますます加速した一年だった。そんな今年の締めくくりに、またユニークな製品の話を聞いた。“IoTマットレス”こと「MOORING」(モーリング)である。

 MOORINGは、簡単にいえば「個人の眠りの状態にあわせて、布団の中の温度を最適に調整してくれるマットレスパッド」だ。マットレスの中に埋め込まれた電圧フィルムと、枕元に設置するセンサーで、眠っている人の状態(心拍数、呼吸、寝返りなどの体動)と寝室環境(室内温度、湿度、光度、騒音など)を測定する。これらのデータと、5万人の睡眠データをもとに導き出したという「最適な温度と睡眠の関係」を照らし合わせて、マットレスが発熱し布団内の温度を自動調節してくれる。

 マットレスは入眠〜覚醒までの睡眠の5段階にあわせて、上半身、腰回り、足など部位ごとに温度を調節する。サイズはシングルとダブルを用意しており、ダブルに2人で寝る場合は左右でそれぞれ個別に動作する。

 これは面白いなと思ったのは、MOORINGが使用する個人にあわせてさらにカスタマイズされていくという話だ。例えば、一定期間使用して「この人はいつも午前2時頃に入眠しているな」と認識されると、それからは2時の少し前からマットレスを温めておいてくれるようになるという。睡眠データは匿名で暗号化されてクラウド上に蓄積され、使用者が増えるほどにこうした精度が高まっていく。このあたりが、開発元が「人工知能マットレス」とも呼んでいるゆえんだ。

 開発元のMIRAHOMEは、中国人が米国で起こしたベンチャーで、英オックスフォード大学で数学と科学を専攻していたAlice氏(CEO)をはじめ、北京大学や清華大学を卒業したメンバーがそろっている。MOORINGは彼らの最初のプロダクトで、米国のクラウドファンディングサイトであるIndiegogoで26万ドル(約2600万円)を集めて量産化が決定。現在は日本のGREEN FUNDINGでやはり出資者を募集しており、12月14日時点で目標金額の100万円に対して673万円を集めている(プロジェクトは2017年1月15日まで)。製品の発送は12月末からを予定しているそうだ。

現在の「ウェアラブルデバイス」に欠けていること

 世の中に、ログを取って睡眠の質を測定してくれる製品はいくつもある。手首に巻く方式のウェアラブルバンドや、枕元に置いて使う睡眠計などだ。しかし、それらは単に「データを取ってくれるだけ」で、実際に睡眠の質を改善するためには、使用者本人が「寝る前に食事をしない」「PCやスマホを使わない」「入浴の時間帯に気を付ける」など行動を改める必要がある。

 当たり前といえば当たり前のことだが、しかしこの点が睡眠改善にとって最大のネックであるともいえる。意思の力だけでは、人間はなかなか変われない。MOORINGの話を聞いて画期的だと感じたのは、「マットレス」という睡眠に関わる寝具そのものが、データを取るだけでなく、改善に直結する実践的なアクション(=温度管理)までこなしてくれるところだ。

「データが取れます」だけでは足りない?

 そしてこの点が、現在の「センサーでデータを取得するウェアラブルデバイス全般」を見ていて、決定的に欠けている部分だと感じている。取ったデータを単に「参考にしてもらう」だけでなく、具体的なアクションにどうつなげるか、その“トリガー”をどう用意するか。IoTデバイスは、既にそこまで求められる段階にきているのではないか。

万人に効く「睡眠の特効薬」はあるか?

MIRAHOME CEOのAlice氏

 睡眠の質を考える上で、MOORINGはなぜ「温度」に注目したのだろうか。

 先に書いた通り、開発元MIRAHOMEのCEOであるAlice氏はもともと英オックスフォード大学で数学と科学を専攻していた。博士号取得の日々の中で、学業と論文執筆、中国と英国の行き来などによりストレスがたまっていき、次第に睡眠に問題を抱えるようになっていったという。(次ページへ

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