充電不要、人間の「体温」で充電するスマートウォッチが登場――秘密はNASAも活用する「ある効果」

» 2017年01月03日 07時00分 公開
[中井千尋ITmedia]

 「Apple Watch」などスマートウォッチの購入をためらう人にとって最大の懸念点は、バッテリーではないだろうか。「便利なのは確かだが、毎日の充電は面倒。そのうち使わなくなってしまうのでは……」という心配の声をよく耳にする。

 しかし、間もなくシリコンバレーから、「充電不要」という画期的なスマートウォッチが誕生する。ベンチャー企業、米Matrix Industriesが開発中の「MATRIX PowerWatch」は、世界初、「人間の体温」で充電できるスマートウォッチだという。

 現在クラウドファンディングサイト「Indiegogo」で開発資金を調達中のこのデバイスは、2017年秋ごろに一般向けに販売される予定。気になる充電の仕組みを主な機能とともに紹介しよう。

MATRIX PowerWatchは、なんと「充電不要」のスマートウォッチ

秘密はNASAも活用する、ある「効果」

 米Matrix Industriesが開発中のスマートウォッチ「MATRIX PowerWatch」。その最大の売りは「充電不要」であることだ。

 装着する人間の体温が持つ熱エネルギーを電気エネルギーに変換することで充電してしまう仕組み。つまり、ただ身に着けているだけで充電されてしまうので、従来のスマートウォッチのようにバッテリー残量を気にする必要はない。

どれだけ充電されているかは画面上で確認できる(Indiegogoより)

 人間の体温で充電するというこの発電技術は、1821年に発見された「ゼーベック効果」に基づいて開発されている。ゼーベック効果とは、複数の物体間で温度差が発生しているときに、電圧勾配がなくても電流が流れるというものだ(逆に電圧を温度差に変える「ペルティエ効果」はペルティエ素子に用いられている)。

 NASA(米航空宇宙局)も古くから宇宙船に電力を供給する方法として利用していた効果で、MATRIX PowerWatchはこれを応用した。

米Matrix Industries創業者のAkram Boukai氏

 米Matrix Industriesの創業者であるAkram Boukai氏は、元ミシガン大学教授で熱電(Thermoelectrics)が専門。同氏は、エコをキーワードに近年、さまざまな製品の「低消費電力化」が押し進められていることからゼーベック効果に注目。

 より一般消費者向けの製品にも生かせないかと、2011年にDouglas Tham氏と共同創業し、MATRIX PowerWatchの開発に踏み切った。

水深50mまで耐えられる防水機能も

 充電不要のMATRIX PowerWatchの主な機能は、消費カロリーや歩数、走った距離、そして睡眠の深さを記録し、表示してくれること。

 充電や電池交換が不要であることから、本体をより頑丈に設計することができ、水深50mまで耐えられる「防水機能」も備えている。水泳中も身に着けることができるため、プールでのエクササイズ中も身体の状態をトラッキングできる。

身に着けて泳ぐことも可能だ

 消費カロリーの計算にも、体温が使われている。そもそも消費カロリーは、身体が生み出す熱量に基づいて計算されるものであるため、理にかなっている。つまり、より精確に消費カロリーを計算できる。

 これらのトラッキングした情報は、MATRIX PowerWatchの1.2インチ(約3cm)のディスプレイ上に表示されるほか、無料の専用アプリと同期させ、スマホでリアルタイムで確認できる。アプリはiOSとAndroidに対応予定。

 MATRIX PowerWatchは腕から外すと、自動的にスリープモードに切り替えられる。それまで記録されていた情報は内蔵メモリに保存され、再び身に着けるとスリープモードは解除。スマホと同期され、そのときの日時にアップデートされる。

目標金額の620%超を調達済み、2017年7月に発送開始

主な開発拠点は香港

 MATRIX PowerWatchは現在、クラウドファンディングサイトで開発資金を募っている。2016年12月末時点で目標金額の620%に相当する約62万ドル(約7300万円)を集めている。

 一般向けの発売予定は2017年秋頃、価格は169.99ドル(約2万円、送料別)。Indiegogoで事前注文すると129ドル(約1万5千円、同じく送料別)。こちらは早くて2017年7月には発送が開始される予定だ。事前注文には、カップル用に2つ、ファミリー用に4つまとめて購入できるプランもある。

 「充電不要」という売りは、スマートウォッチとしてはインパクト大だ。今後、この「ゼーベック効果」が他のウェアラブルデバイスにも生かされることも期待したい。

Matrix PowerWatchの公式動画

ライター

執筆:中井千尋

編集:岡徳之


Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

昨日の総合アクセスTOP10
先週の総合アクセスTOP10
  1. 親が「絶対たぬき」「賭けてもいい」と言い張る動物を、保護して育ててみた結果…… 驚愕の正体が230万表示「こんなん噴くわ!」
  2. フワちゃん、収録中に見えてはいけない“部位”が映る まさかの露出に「拡大しちゃったじゃん」「またか」の声
  3. 「これは悲劇」 ヤマザキ“春のパンまつり”シールを集めていたはずなのに…… 途中で気づいたまさかの現実
  4. 「ふざけんな」 宿泊施設に「キャンセル料金を払わなくする方法」が物議 宿泊施設「大目に見てきたが厳格化する」
  5. 田代まさしの息子・タツヤ、母の逝去を報告 「あんなに悲しむ父親の姿を見たのは初めて」
  6. 「遺体の写真晒すのはさすがに」「不愉快」 坂間叶夢さんの葬儀に際して“不適切”写真を投稿で物議
  7. 大友康平、伊集院静さんの“お別れ会”で「“平服でお越しください”とあったので……」 服装が浮きまくる事態に
  8. 妊娠中に捨てられていた大型犬を保護 救われた尊い命に安堵と憤りの声「絶対に許せません」「親子ともに助かって良かった」
  9. 極寒トイレが100均アイテムで“裸足で歩ける暖かさ”に 今すぐマネできるDIYに「これは盲点」「簡単に掃除が出来る」
  10. 「奥さん目をしっかり見て挨拶してる」「品を感じる」 大谷翔平&真美子さんのオフ写真集、球団関係者が公開
先月の総合アクセスTOP10
  1. 釣れたキジハタを1年飼ってみると…… 飼い主も驚きの姿に「もはや、魚じゃない」「もう家族やね」と反響
  2. パーカーをガバッとまくり上げて…… 女性インフルエンサー、台湾でボディーライン晒す 上半身露出で物議 「羞恥心どこに置いてきたん?」
  3. “TikTokはエロの宝庫だ” 女性インフルエンサー、水着姿晒した雑誌表紙に苦言 「なんですか? これ?」
  4. 1歳妹を溺愛する18歳兄、しかし妹のひと言に表情が一変「ちがうなぁ!?」 ママも笑っちゃうオチに「かわいいし天才笑」「何度も見ちゃう」
  5. 8歳兄が0歳赤ちゃんを寝かしつけ→2年後の現在は…… 尊く涙が出そうな光景に「可愛すぎる兄妹」「本当に優しい」
  6. 1人遊びに夢中な0歳赤ちゃん、ママの視線に気付いた瞬間…… 100点満点のリアクションにキュン「かわいすぎて鼻血出そう!」
  7. 67歳マダムの「ユニクロ・緑のヒートテック重ね着術」に「色の合わせ方が神すぎる」と称賛 センス抜群の着こなしが参考になる
  8. “双子モデル”りんか&あんな、成長した姿に驚きの声 近影に「こんなにおっきくなって」「ちょっと見ないうちに」
  9. 犬が同じ場所で2年間、トイレをし続けた結果…… 笑っちゃうほど様変わりした光景が379万表示「そこだけボッ!ってw」
  10. 新幹線で「高級ウイスキー」を注文→“予想外のサイズ”に仰天 「むしろすげえ」「家に飾りたい」