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第43回 Appleが取り組む「人々の健康」への挑戦 Apple ジェイ・ブラニック氏インタビュー(後編)“ウェアラブル”の今(1/2 ページ)

Appleはなぜ「Apple Watch」を作ったのか。そこには「健康」という人類共通かつ永遠のテーマに本格的に取り組むAppleの思いがあった。Appleのフィットネス・健康技術のディレクター、ジェイ・ブラニック(Jay Blahnik)氏のインタビューをお届けする。

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Appleが取り組む「人々の健康」への挑戦

 運動の習慣化を促す「Apple Watch」のアクティビティの秘密を聞いた前回に引き続き、米国のクパティーノにあるAppleのキャンパスで行った、Appleのフィットネス・健康技術のディレクター、ジェイ・ブラニック(Jay Blahnik)氏へのインタビューでの話を紹介する。

 実はインタビューに加えて、カリスマトレーナーとしても知られるブラニック氏指導のもと、Appleの本社ビルの外周道路、Infinite Loopを1周ウォーキングしながら、Apple Watchを用いたエクササイズ計測のコツなどについても聞いたので、そのあたりの話も後ほど披露したい。

Apple Watchを作った目的は「人々の健康」

 Appleは、iOSの機能として「Health」(日本語版では「ヘルスケア」)を搭載している。「すでにさまざまな企業がiPhoneを使ったエクササイズ機能や健康機能のアプリを作っている」とブラニック氏が指摘するように、外部デバイスの有無に限らず、iPhoneを健康維持や運動計測の目的に活用するアプリは増えている。

 ヘルスケアアプリケーションには、iPhone独自に集計している移動に関するデータと、サードパーティーを含む健康関連のアプリが収集したデータを統合管理する役割がある。そしてHealthKitを通じて、これらのデータを安全にiPhone内の他のアプリで活用することができる仕組みを構築した。

 また、より踏み込んだ研究が行えるプラットフォームとしてResearchKitを用意し、医療機関などがiPhoneを用いた医学や健康に関する研究データを集めることができる仕組みを提供している。

 こうした背景がある中で、Appleは独自のウェアラブルデバイスとしてApple Watchを発売した。iPhoneをサポートする役割ももちろん担っているが、人々をよりアクティブに、健康にするという目的は大きい。

 「Apple Watchを通して健康にどのような良い影響を与えられるか考えた時、人々がよりアクティブになること、毎日ほんの少しだけでも活動的になって、小さな変化をすぐに理解し、常に見られるようにすることを考えました。よりアクティブになること、運動することによって、さまざまな病気のリスクの軽減といったメリットが得られると言われているからです」(ブラニック氏)

買収では学べないことを知るために

 「Appleにとって、健康や医療はより理解を深めることが必要な領域だった」とブラニック氏は話す。新たな領域に参入するシリコンバレー企業の多くは、すでにそれに取り組んでいる優秀な企業を買収することで部門を設立する。

 しかしAppleはそうはせず、自分たちで世界有数の健康とエクササイズに関するラボを設立した。その様子は、ラボ内を取材したABCニュースのビデオで確認することができる。

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ABCニュースが取材したAppleの健康とエクササイズに関するラボの様子

 「Appleが複雑な人々の体について、より深く取り組むために選んだ最良の方法が、ラボの設立でした 」(ブラニック氏)

 そこで、世界有数の優れた研究環境を用意し、26人の看護師や14人の運動生理学の専門家と研究に協力した社員が、室温管理された屋内や屋外でのさまざまな環境でのデータの収集を行った。その総時間数は実に33000時間にも及ぶ。これらのデータはApple Watchの計測に生かされ、またApple Watchの可能性を検討するために使われている。

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