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コラム

ウォーキングで記憶力アップ?運動が脳に良い科学的根拠とは

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 「基本的には人間には走り出すと『うれしい』と感じてしまう本能がある」――雑誌『Sports Graphic Number』のWeb版インタビューで、脳科学者・茂木健一郎氏はこのように語っています。運動が脳に良いとはどういうことなのか? その科学的な根拠に迫ります。

運動すると記憶力がアップするらしい

 例えば「記憶力」という側面から運動と脳について考えてみましょう。人間の記憶は「海馬」という場所で処理されています。東京都健康長寿医療センター研究所の宮崎剛氏によれば、この海馬における「脳由来神経栄養因子(BDNF)」の働きが記憶力に大きく影響するのだそうです。そしてこのBDNFの活動は運動によって活発になることが分かっており、事実運動をさせたマウスの記憶力アップが実験でも確認されています。

 2011年にはピッツバーグ大学研究チームが、有酸素運動を続けた場合、そうでない場合と比べて海馬が約2%大きくなっているという論文を発表しました。科学的に見て、運動は記憶力をアップさせるのです。

運動と脳のステキな関係

 「運動が脳に良い」理由は記憶力の向上だけではありません。GABAという物質をご存じでしょうか? ギャバ・ストレス研究センターによれば、この物質は不安やストレスを抑制する「抗ストレス作用」があるとされています。

 2013年に米『Journal of Neuroscience』誌に発表された論文によれば、運動をしているマウスはそうでないマウスよりもGABAの放出量が多いのだそうです。つまり運動をしている人ほど過度の不安感やストレスに対する耐性が強い、というわけ。

 いわゆる「やる気」に関係があるとされている線条体の活動も、運動によって活発化すると考えられているなど、脳と運動のステキな関係はますます拡大していきそうです。

一体どんな運動をすればいいのか?

 ただやみくもに運動して脳に酸素がいかないようなレベルまで追い込むのが、脳に良くないことはなんとなく分かります。『脳を鍛えるには運動しかない!』を書いたハーバード大学医学部のジョン・J・レイティ氏によれば、脳を活性化するための運動として比較的スピードのあるウォーキングや、ランニング、エアロバイクなどの有酸素運動を挙げています。

 先ほど挙げたピッツバーグ大学研究チームの実験での被験者たちの海馬が大きくなったのも、毎日40分程度の有酸素運動を半年にわたって行った結果です。米国の2008年版の運動ガイドラインではウォーキングを週5回以上1日30分することに加え、30分の筋トレを週2日行うように推奨しているのだとか。軽い有酸素運動を小まめに続けることが「良い脳」のために効果的だということです。

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