NTTドコモはヘルスケア領域で何を目指すのか(3/3 ページ)
ヘルスケアとメディカル、両方をしっかり見ていく
―― ドコモとして、ヘルスケア分野やフィットネス分野などに選択肢を広げる中で、注力していこうと考えていらっしゃる領域はどこですか。
安部氏 今はまだ我々自身がこの分野に対して新参者ですので、どちらかに注力するというのではなくて、両方ちゃんと見てやっていきたいなと思ってます。ただ、我々なんかはしいて言えばヘルスケアかメディカルかという話だと思うんですね。
メディカル分野には難しいところがたくさんあります。厚生労働省さんの制度的な問題もありますし、海外の事例も参考にさせていただきながら、国内でできることってなんだろうと少しずつ手探り状態ですね。それと比較すると、ヘルスケアは比較的取り組みやすくビジネスにもなりやすいので、そういうところから入っているっていうのが現状です。
手前味噌ですが、メディカル分野では以前から東京大学さんの健康空間情報学講座に出資して、連係研究をやっています。糖尿病の自己管理支援ですとか、救急搬送時に病院側とスピーディに情報をやりとりして、治療を1秒でも早めるための研究ですとか、そういったことをさせていただいてます。
お医者さんという、すばらしい知見を持たれた方が、日本だと約30万人くらいいらっしゃいますので、そういった方たちの知見なりエビデンスをちゃんと生かしたうえで、そこにさらにICT(情報通信技術)を生かせるのではないかと。医療の世界っていうのは、ICTがまだまだな部分がありますので、そこに我々としてできることは何か、ということで協力させていただきたいですね。そういったことは着々とやらせていただいたうえで、どこかでちゃんとビジネスにしていきたいと考えてます。
その例の1つでもありますが、博報堂さんと提携して、NTT関東病院の協力のもと「妊婦手帳」というアプリを提供しています。妊婦さんてお腹に赤ちゃんがいるので、生活が制限されるし、情報もすごく制限される。情報をもとめてインターネットにアクセスされるんですが、中には間違った情報も多い。病院側からすると、間違った情報を使わないで欲しいのですが、それを伝える方法がないですね、と。だったらお医者さんのほうからちゃんと伝えられるような仕組みを提供しましょう、という目的で作っています。
こんな風に、メディカル分野を通じても結構やれることはあるかなと思ってまして。こういう部分でももしかするとウェアラブルデバイスを生かす手があるかもしれません。
―― 活動量計を使っていると、データの善し悪しや対策が分からないという問題がでてきます。その点「からだの時計」ではかなり細かいアドバイスを提供するようになってきましたよね。こういう部分は続けられるかどうかにも影響する大事なところだと思うのですが、海外ではマネタイズの面も含め、生身の人が介在することが大事とも言われるようになっているとか。
安部氏 まさにそうだと思っています。海外でもマネタイズできてるサービスはどこかっていうと、人の存在があるところだったりします。そこは日本も一緒で、単にアプリやサービスで連携しているだけじゃなくて、例えばその後ろに栄養士がいて、食事の指導や健康指導をちゃんとやっているような形っていうのは、日本でも成り立つんじゃないかと思っていますし、そういう風にしていくべきだと思っています。人の影を感じさせながらいかにサービスできるか。そういう意味では、まさにネットとリアルをいかに融合させてお客様にサービスを提供できるかっていうのは、すごく重要かなと思っています。
ただ、いくらでもコストがかけられるわけではありません。費用対効果の中で適切な範囲で関わっていく必要があります。しかも、重要だからといって関わりすぎるのもよくない。ちょうどいい距離感が大切です。心地よい距離感で、適切なレコメンドができるのが理想なんだろうなって思っています。
―― サービスもデバイスも、ここからさらに進化していきそうですね。どうもありがとうございました。
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