第51回 「JINS MEME」は何がすごいのか:“ウェアラブル”の今
取材をしてから約1年、センサーを搭載したアイウェア「JINS MEME」の販売が始まった。ようやく実機を使う機会ができたので、JINS MEMEの使い勝手や可能性について考えていきたい。
約1年前に本連載で、眼電位と体のバランスを計測することができるアイウェア、「JINS MEME」についてご紹介した。そのJINS MEMEが11月5日に発売を迎え、日本帰国の際に試すことができたので、まずはその様子をお伝えしたい。
改めて、JINS MEMEとは?
ジェイアイエヌのJINSは、低価格・高品質のアイウェアブランドとして展開しているが、「JINS PC」(現在は「JINS SCREEN」と名称が改められた)というブルーライトカットレンズを備えたメガネや、花粉症カット機能を備えたメガネなどで、視力矯正以外の「機能性メガネ」の市場を切り開くことに成功している。
JINS MEMEも、機能性メガネのカテゴリーに入ると同時に、スマートフォンと連携して利用することから、本連載のテーマでもあるウェアラブルデバイスとして扱うこともできるだろう。
JINS MEMEは、正面から見れば、通常のメガネとさほど変わらないが、テンプルの先は通常の眼鏡より大きくなっており、ここにバッテリーや加速度センサー、ジャイロセンサーが収められている。JINS MEMEには2モデルあり、加速度センサーのみを備えた「MT」に加えて、眼電位センサーを搭載する「ES」が用意された。筆者が試すのはESの方だ。
MTとESの違いはノーズパッドとブリッジの部分に搭載されているセンサー。この3点の電極から、眼電位を取りだし、瞬きや目がむいている方向などを検出できる仕組みだ。これまで4点でデータを取っていた眼電位を、3点で取れるようになったことで、メガネに搭載しやすくなったという。
普通のメガネと変わらぬ見た目で、新たな機能性を備えている点が非常に優れている。
アプリで機能が増えていく
本連載でもたびたびご紹介している、ウェアラブルデバイスのデザインパターン。すなわち、デバイスの頭脳をスマートフォンのアプリに任せることで、デバイス側のさまざまな負担を減らし、バッテリー持続時間を延ばし、価格を抑えることができる。
その点で、「Google Glass」や「Apple Watch」は、そのパターンから外れているデバイスと言える。前者はプロジェクトの大幅な変更を余儀なくされたが、後者は前述のデザインパターンを崩そうとしている。当初はiPhone側でアプリの処理や通信をさせていたが、watchOS 2で、時計そのものにアプリの処理を任せるようになった。
JINS MEMEは、Google Glassとは違い、ディスプレイに類するものは搭載されていない。そのため、取得した情報はスマートフォンのアプリを用いて確認することができる。加えて、このデータをサポートするアプリが増えていくことで、取れているデータは同じでも、異なる分析を見ることができるようになる。
現在、JINS MEMEの設定や、取得している情報、基本的な分析を提供してくれるアプリに加えて、ランニングとドライブに向けたアプリが用意されている。また2016年には、コアマッスルを鍛えるトレーニングに向けたアプリがリリースされる予定だ。
リアルタイムで、姿勢や目の動きを検知
JINS MEMEを使い始める際に、初期設定、いわゆるキャリブレーションを行う。加速度センサー、ジャイロセンサーを調整するには、30秒間壁に背中を付けてまっすぐな姿勢を作る、という動作を行う。また、眼電位センサーの調整には、目を上下左右に動かして、眼電位の変化を学習させる。いずれも、JINS MEMEアプリでガイドしてくれるため、特に難しいことはないだろう。
初期設定が終わると、早速データを取り始めることができる。
通常は1分に1度通信を行い、視線の方向変化の頻度、瞬きの回数・強さ・速さ、歩数、左右の足の歩行周期、体軸のぶれなどの情報をアプリに記録する。このモードでは、16時間の連続記録が可能で、起きている時間をほぼカバーしきることができる。
Apple Watchや「Misfit SHINE」など、腕や服に身につけるものの場合、歩数は取れても、体の軸を検出することはできないし、歩く際の左右の足の違いまでは分からないだろう。眼電位センサーを搭載していないMTモデルであっても、加速度センサーとジャイロセンサーのデータは同じように取得できるため、スポーツトラッキングの用途でも、非常に充実したデータが集められることが分かる。
キャリブレーションが終わったJINS MEMEを装着して、アプリを立ち上げると、リアルタイムでセンシングしているデータを見る画面を開くことができる。きちんとキャリブレーションができていれば、現在の体軸の状況を、頭を表す丸い図形の傾きで知ることができる。右肩を下げれば、丸い図形の右側が下がり、上を向けば、その円も上の方向へ向く。
また、眼電位センサーのリアルタイムデータも興味深い。アプリの画面には目のイラストが表示され、瞬きをすればイラストも瞬きをし、瞬きの時間が表示される。筆者の場合、0.15秒近辺の数字が出てくる。また、眼球を右に向けると、イラストもそれに反応する。試しに、目を動かさず、頭を動かして右を見たが、その際にはイラストの眼球には動きがなかった。
こうした数字を、いかに分析し、活用するか
もちろん何も調べていない段階では、この数字から何を知ることができるのかは分からない。しかし、自分の動きに完全に連動していることが分かり、それだけでも面白い。この「面白い」という感覚は、ウェアラブルデバイスを身につけ続ける際の最初のきっかけになる、重要なものだと思った。
次回は、JINS MEMEのアプリを使っての、ライフログ分析について触れていきたい。飛行機での移動、雪道のドライブ、ペンギンの観察、打ち合わせといった、出張のスケジュールをこなしたとある1日で、どのような変化があったのかを紹介したい。
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