なぜ残業は減らないのか――働き方の多様化、実現のカギは サイボウズ青野社長に聞く(2/4 ページ)
ビジョンのために「売上と利益を下げる」宣言
――他企業では働き方の多様性が「ダイバーシティ」というお題目、経営陣の独り言で終わっているところもある中で、サイボウズが社員の行動レベルにまでビジョン共有できた理由はあるのでしょうか?
「ビジョンの共有にどこまでこだわるか」の差だと思っています。こういう風にいうと、ある意味「気合いと根性論」といわれても仕方ないのですが(笑)。
よく会社で話題になるのは、「早く帰れと言ったって、売り上げと利益も確保しなきゃいけないよね」ということ。これって究極の選択で、やっぱり案件を受注したいって思ったら「すまないが、今月はたくさん働いてくれ」と言ってしまうんです。すると、「あれ!? 早く帰る方針じゃないの!?」と、社員はビジョンと実態のズレに疑問を覚えてしまう。ここにビジョンが浸透しない原因があると思います。
そこでサイボウズは、売上と利益を下げたんです。株主総会でも「この会社は売上と利益を最優先にはしません」と先に言ってしまって。サイボウズの一番の目的は、「世の中をチームワークあふれる社会にする」こと。チームワークあふれる社会にするためには、僕らがチームワークあふれる会社である必要があります。
そこでキーになるのが多様性。社内の多様性が、売上や利益を追いかけた結果満たされなくなるのであれば、いっそ解散したほうがいいと僕は思っています。そこへの徹底的なこだわりが、今のサイボウズを作っていると思います。
現場との温度差をどう解消するか
――社員が増えれば純度が高くなると言う話がありましたが、やはり人数が増えれば声は届きにくくなると思います。他社でも、トップダウンで伝えていく際、現場の温度差に悩まされることが多々あると聞きます。
人数が増えてくると直接伝えるのは確かに大変になりますが、弊社はグループウェアの会社なので、グループウェア上に私がメッセージを発信し続けることで、浸透度を高めることができたと思います。
発信内容に一貫性を持たせておくと、「去年も今年も、同じことを言っているよね」と徐々にビジョンが浸透していきますし、僕が打ち出す優先度、例えば「売上よりも働き方が大事だぞ!」というメッセージが都度届くようになれば、社員はおのずと動いていくんです。
また、社内の会議の議事録なども全てグループウェアにアップされています。議事録をアップしておくとたまにリアクションがあるのですが、それが職場の空気作りに一役買うこともあります。
この間は、ある得意先から緊急の依頼があって、営業部門としてはぜひ受けたいと言っていました。しかし、それを受けようとすると法務部門にすごく負荷がかかる。この状況で仕事を受けるかどうか僕が判断しなければならないことがありました。
法務部門の若い担当は「やらせてください」と張り切って言ってくれたので、結果的に「分かった、今回は認める。でも次回からは、数週間前に申請が来なければ絶対に受け付けない」と決めました。結果、その議事録を見たほかの社員から「そう言ってくれて安心しました」とコメントをもらって、1つ社内の改革につながったと実感しています。
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