なぜ過労死はなくならないのか 「逃げられなくなる前」にできること:臨床心理士みらーのメンタルアドバイス
昨今痛ましい事件が起きたこともあって、過労死や過重労働の問題はとても関心が高く、いろいろなところで話題になっています。少し前のデータになりますが、厚生労働省の『過労死等に関する実態把握のための社会面の調査研究事業』の報告書によれば、2014年度に1カ月の残業が最も長かった正社員の残業時間が、過労死ラインとされる「月80時間」を超えた企業は22.7%にも上ったとのことです。
このように過労の問題は注目されていますが、実態からすればまだまだ危機感は薄く、あまり深刻なものと受け止められていない現状があるといえます。
“過労”とは一体どのようなもので、過労になったとき、頭や身体の中ではどんなことが起きているのでしょうか?
臨床心理士みらー プロフィール
大学院修了後、専門学校の非常勤講師および、高校のスクールカウンセラーを勤め、同時期に教育機関での心理相談員および不登校対策事業の心理相談担当を歴任。
現在は悩み相談掲示板サイト「ココオル」で相談員を務めるほか、活動領域を青年期支援に移し、地域若者サポートステーションにて若者支援も行い、年間のカウンセリングは1000件以上行い、相談支援に定評がある。
正常な判断ができなくなる――過労のメカニズム
まず、「心身を損ねるほど働く」というのはどのくらいの時間をさすのでしょうか。
法的には1カ月あたりおおむね80時間を超える時間外労働が認められる場合は、過重労働と呼ばれます。この過重労働の状態になると、心身に大きな負荷がかかって消耗し、コンピュータでいうオーバーヒートのような状態になります。すると、正常な判断力が奪われるため、視野が狭くなり、思考は硬直化し、自分では身動きが取れなくなる心理状態に陥ってしまいます。
こうなると、心身の不調の自覚はあっても、それをどうにかしようとする判断力がなくなってくるので、ルーティン化されている出勤を続け、さらに消耗していきます。
この状態になるとより思考力が奪われ、休むとか、転職をするなどの思考も頭に上らなくなります。そうして思考力が奪われ続けた結果、最後はこの状態から脱するためには一番原始的な“死”という方法を選んでしまう訳です。もしくはそこまでの状態になる前に心身が限界を迎えて、うつ病や脳血管疾患や心疾患などの病気を発症し、ひどければ命を落としてしまうこともあります。
もうこの状態は自分で物事が考えられない状態ですから、死ぬ前に辞めればいいとか、休めばいいという議論は無意味になります。
そのため、見かねた家族が病院に連れて行く、上司や同僚が休むように促す、友人がアドバイスするなど、周囲の働きかけがなければ、過重労働を繰り返し、最悪の結果に向かっていってしまうということになります。
このように過労は命にも関わるほど深刻で、決して軽視していい問題ではありません。
また、過労で倒れるというと、「立っていた人が突然ばったりと倒れる」という状況を考えるかもしれませんが、そんなことはめったに起きません。過労で倒れるというのは「過労によって身動きがとれなくなる」状態のことであり、見た目からは判断できないこともあるので、深刻度が低く見られがちです。
過労に対処して健やかな生活を送ろう
1. 労働時間のコントロール
身体に現れる症状を治療することも必要ですが、まずは「過労の原因を解消する」というのが最も根本的な解決法になります。過労は過剰な労働量によって引き起こされますから、企業に対して残業時間を減らす交渉をしたり、自分自身や、難しい場合は周りの人が労働時間をコントロールすることによって、過労となる根本的な原因を取り払う必要があります。
2. 休養と回復時間の確保
過労の状態は疲労がたまりすぎてコンピュータでいうオーバーヒートした状態のことですか、心身をしっかり休めないと過労の状態は回復しません。そのため、過労が原因で何らかの症状が出ている時、まずはしっかりと休むこと、症状によっては医師の診断を受け治療することも必要です。
ただ、ひどい過労状態に陥っている場合、本人ではそういったことに気付けないことがありますので、余裕があるうちに休むか、もしおかしいと思ったら周りの方が声をかけてあげたり、休ませたり、病院につれて行ってあげたりということも必要になります。
3. 周囲への事前の相談
過重労働の状態になってしまえば、正常な判断力が低下する訳ですから、その状態で自分から動くということは難しくなります。そのため、そういった状態になる前の、正常な判断ができる状態のうちに誰かに相談しておいたり、自分の状態をしっかり伝えておいたりするという行動がとても重要です。
過労からの脱出には家族や友人、会社の上司などの周りの方の協力が必要不可欠です。自分が過労の状態に陥る前に日常に相談できる人を見つけておきましょう。また、自分がつらい、大変だと思ったらすぐ誰かに相談してみることをお勧めします。身近な人がいなければカウンセラーや電話、インターネットでの相談サービスなどもあるのでご利用されてもいいと思います。また、心身に不調を感じたらすぐ医療期間での受診を検討くださいね。
過重労働による過労は、死に至ることもある深刻な問題です。違和感を覚えたら残業を減らすように交渉してみたり、すぐ休んだり、誰かに相談したりという適切な対処をとってくださいね。そうして自分の負荷を減らし、健やかに日々を過ごしていきましょう。
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