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» 2015年03月09日 11時17分 UPDATE

“ウェアラブル”の今:第19回 ユーザーに委ねられる、“Apple Watchの今後”

Apple Watchはアイコニックではない、という指摘がある。これまで、Appleの製品の多くは個性的で、一目見てそれと分かる特徴を持った製品が多かったが、Apple Watchはそうではない、というのだ。

[松村太郎,ITmedia]
Apple Watch Apple Watchの発表会と予想されるイベントは、生中継が予定されている

 いよいよ米国時間3月9日午前10時(日本時間3月10日午前2時)から、Appleがサンフランシスコでメディア向けのイベントを開催する。先週もお伝えした通り、「Apple Watch」の詳細と、その他の新製品の発表が行われることになるとみられている。

 すべては今晩、もうしばらくたてば明らかになるはずだ。先週流れたApple Watch関連の情報等に触れながら、Apple Watchのファッションからの側面から分かる狙いについて考えてみよう。

金を節約する「Apple Gold」の特許

 5000ドルとも1万ドルともいわれるApple Watchの18金を使ったWatch Edition。

しかしここに来て、そんなに高くならないのではないか、という見方も出てきた。Forbesが予測した2999ドルという価格は、比較的手頃な宝飾時計と同じような価格といえる。

 この裏付けとなる情報を紹介したのは、ウェブサイト「All this」だ。Appleは金の含有量を減らして18金を作り出す技術について、特許を出していたのだ。

 18金は、金に銀や銅を混ぜて合金作るが、この特許では低密度セラミック粒子を混ぜて固める。密度が低く、軽くなる。すなわち、金の含有量を減らすことができる。同時に、ティム・クックCEOが強調する、「傷つきにくさ」も実現できる。

 より原価を下げられるということは、Appleによる価格設定の自由度を与えることになる。どれだけ他のモデルと差を付けるか。Apple Watchのブランド作りやターゲットに対して、Appleがどのように考えるか次第、ということだ。

Apple Watchはアイコニックではない?

 ファッション業界を取材する在米のジャーナリストに話を聞くと、Apple Watchは「なんらアイコニックな存在ではない」と話す。

 ケースの材質とサイズ、そして多数用意される交換可能なバンドによって、Apple Watchは身につける人の好みを反映できる。しかしこのことは、Apple Watchを持っている人が、そのことを街でアピールする「アイコン」としての役割を消してしまっている、というのだ。

 iPodが登場し、白いイヤフォンが新しい音楽プレイヤーのアイコンになったのはすでに15年近くも前の話だ。

 黒が多かったオーディオケーブルの世界で、本体のカラーと合わせた白いイヤフォンは特徴的で、iPodユーザーであることを一目で伝え、すれ違う人の白いヘッドフォン率の増加によって、iPodが支持されていることを静かに、しかし急速に広めることになった。

 ではApple Watchはどうだろう。おそらく、「共通のなにか」を見出すことができないため、あるいは普通の腕時計をしている人とすれ違う程度にしか認識されないかもしれない。

 もしiPodのような効果を狙うなら、すべてのモデルに標準で「白いシリコンバンド」を付属させることもできるだろう。しかし、それは時計としては、無粋だ。

着こなしは、使う人々に任せる

 前述のジャーナリストは、Apple Watchについて、別の狙いを指摘した。すなわち、「Apple Watchがどのように人々に受け入れられ、どのようにファッションとして取り込むかについて、Appleは我々に委ねたのではないか」という予想だ。

 ケースの材質はとにかく、サイズへのニーズ、そしてバンドの材質や色、デザインなど、どんなものが好まれるのか。どんな着こなしを人々がするのか。初めて時計に取り組むAppleは「これが正しい」と決めず、より多くの人々の使い方を見て決めるのではないだろうか。

 Appleはしばしば、そうした人々が考えたニーズの取り込みを行ってきた。

 Apple Watchによく似た正方形のタッチディスプレイを持つiPod nanoは、初めてその形状でリリースした際、クラウドファンディング「Kickstarter」で、iPod nanoを腕時計のように使うためのバンドが人気を博した。

 そこで、Appleは、同じ形状のiPod nanoのアップデートで、時計の文字盤を20種類近くに増やし、「iPod nanoを時計として楽しむユーザー」に応えた。

 Apple Watchについても、我々がどのようにしてApple Watchを楽しむか、Appleは注意深く見ながら、ハードウェア、交換バンド、そしてソフトウェアへのニーズの反映を行うだろう。

時計として成立させる

 Financial Timesに、ニック・フォルクス(Nick Foulkes)氏によるジョナサン・アイブ氏へのインタビューが掲載されている。Apple Watchリリースを前に、彼も頻繁にメディアに露出している。

 Apple Watchについては、成熟を極めた製品だと指摘しており、何千ものテストを通じて洗練された製品だと答えている。バッテリーについても、薄く軽い「時計」であるために、毎日充電しなければならなくなってもバッテリーを制限する必要があるという。

 おそらく、使い始めた際、バッテリーの持続についてはユーザーは不満を漏らすことになるはずだ。しかしそれも、アイブ氏によれば、テスト済みで、ベストな選択をしているとのことだ。

 Apple Watchによって、デザイン性の高い製品群から「ファッション」あるいは「ラグジュアリー市場」への参入を目前とするApple。その最初の一歩に注目しつつ、我々もウェアラブルデバイスの世界について、考えてみるとよいだろう。

Apple Watch Apple Watchを発表するティム・クックCEO

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