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» 2015年07月06日 06時00分 UPDATE

自宅でできる遺伝子検査キットは、本当に知りたいことが調べられるのか?

アンジェリーナ・ジョリーの例を知って、「じゃあ私も」とか、「将来に備えて自分の奥さんにも」と思われた方。普通に自宅でできる遺伝子検査を行っても、このような判断はできないということをご存じでしょうか?

[Navigene編集部(エス・エム・エス),ITmedia]

日本でもはやり始めた遺伝子検査キット

 自宅で簡単に遺伝子検査をというのは、もともとはアメリカの企業が始めたのがきっかけです。昨今では有名な日本企業も次々に参入し、今や個人向け遺伝子検査キットを販売する会社は国内だけで13社もあるといわれています。

 個人向けの遺伝子検査自体は、少し前までは医療機関において特別な場合にしかおこなわれませんでした。例えば、染色体の異常によって発症するダウン症について、お母さんの羊水から染色体検査をおこなうことがありました。これも遺伝子検査の一種であり、高齢出産などリスクの高い出産の場合は検討される検査です。

 検査で分かる情報は扱いが難しいため、なかなか自宅で受けるには障壁がありました。しかし、先進的な企業が、検査できる項目などを絞りながら自宅での検査を推進したため、少しずつ日本でも自宅で受けられるようになっています。

調べることのできる疾患の種類

 疾患には、大きくわけて3種類あります。

(1)遺伝に強く起因するもの(遺伝性の病気)

(2)遺伝と環境が合わさって発症するもの(糖尿病や心筋梗塞など)

(3)環境によって発症するもの(感染症、事故など)

ts_column3-01.jpg 遺伝と環境の要因を元に、病気をマッピングした例。(Navigene 遺伝子とは

 (1)は病気の診断となる可能性が高いため、検査は医療機関を中心におこなわれます。遺伝性の病気としてはダウン症候群や筋ジストロフィー、血友病、家族性腫瘍など。遺伝性乳がんや遺伝性大腸がんは、家族性腫瘍にふくまれます。

 簡単にできる自宅検査は主に(2)についての検査です。多因子疾患ともよび、喫煙や多量の飲酒、暴食といった生活の乱れが大きな要因となる生活習慣病がふくまれます。検査結果によっては、「これで安心してタバコが吸える」などと考える人もいますが、これは大きな誤りです。生活習慣という要因も関わっているため、遺伝的に発症しにくいという結果がでても、発症しないわけではないのです。

 (3)は感染症や事故などによって発症するものなので、遺伝的な影響はほとんどないものと考えられます。

 多くの人が遺伝子検査を行うというと、「自分の未来の病気などが予測できてしまう」というイメージを持ちますが、実はそのようなことが分かるのは(1)の強く遺伝に起因する病気だけです。確かにこの病気の検査であれば、将来の高い確率で発症するリスクが分かることがあります。

 一方、多因子疾患の場合は遺伝的要因ではどの程度なりやすいか、といったことしか分からず、「遺伝的には普通の人と比較して1.1倍なりやすい」といった曖昧なことしか分からないのです。

将来発症する可能性の高い病気を遺伝子検査で調べるには

 将来かかりうる病気のリスクの高さを知るには、医療機関の遺伝子検査を利用する必要があります。しかし誰でも受けるべきものではありません。まず家族や血縁者の既往歴などを調べる必要があります。簡易ですが、親族の既往歴から遺伝性疾患の発症リスクを持っているかどうかがおおよそ判断することができます。

 リスクが高い場合は検査を勧められることもありますが、リスクが高くとも将来必ず発症する、というわけではありません。検査で全てが分かる、というわけではないこともよく理解しておく必要があります。このように非常に扱いの難しい病気や検査のため、なかなか積極的な利用が難しいというのが現状です。

 リーズナブルで誰でも簡単にできる遺伝子検査。実は、病気にも種類があり、調べる病気などで分かることが変わってくるので注意が必要です。

Navigeneは遺伝子検査に関する総合サイトです。現在は、遺伝性疾患(遺伝性乳がん、遺伝性大腸がん)と遺伝子検査の情報提供を行っています。

遺伝的リスクを理解することでがんや生活習慣病などを予防できること、そしてそれを手助けできるような情報サービスを目指しています。


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