コラム
» 2017年02月03日 06時00分 UPDATE

食事栄養の専門医師に聞く! 「ストレス食い」の3つの原因と対策

ストレス解消のために「食」に走ってしまう人は、ぜひ原因を知り、対策を行いましょう。

[石原亜香利,ITmedia]

 仕事や人間関係でストレスがたまると、どうしても「食」に走ってしまい、たくさん食べ過ぎてしまうという人はいませんか。もちろん、食べることでストレス解消になることもありますが、限度を超えれば身体に支障を来すこともあります。また、体重が増えてしまい後悔するようでは元も子もありません。

 食べ過ぎにはさまざまな原因がありますが、今回は栄養精神医学専門医師による栄養学的な観点から、3つの原因を解説します。日ごろからストレスを感じがちで、食事量に問題を抱えているという人は、原因と対策を理解して食習慣を変えてみましょう。

監修・取材協力:奥平智之先生

埼玉メンタルへルス交流会(SMN)会長

http://www.saitama-m.net

医療法人山口病院精神科部長(埼玉県川越市)。東京女子医科大学東洋医学研究所非常勤講師(漢方外来)。新宿溝口クリニック栄養療法外来・セミナー担当医師。日本栄養精神医学研究会会長。食事栄養療法倶楽部代表。漢方専門医、精神科専門医、認知症専門医指導医。埼玉県西部地区東洋医学研究会世話人。日本スポーツ精神医学会理事、日本うつ病学会評議員・双極性障害委員会フェロー。


1. 血糖値の乱高下が過食の原因になっている場合

 ストレス食いをすると、どうしても早食いになりがちです。さらに高GI値のもの、つまり血糖値の上がりやすいものを食べると、血糖値が急上昇した後に一気に急降下して、低血糖状態になります。これは、インスリンが過剰に分泌されて血糖を下げすぎてしまうためです。

 血糖の急激な下降によって、イライラしたり、集中力が低下したり、眠気に襲われることがあります。また、低血糖のために衝動的に食べたくなります。

  • 低GI値の主食の例:玄米、そば、全粒粉のパン、ライ麦パン、春雨など
  • 高GI値の主食の例:精白米、餅、あんパン、食パン、フランスパン、ラーメン、うどんなど

対策

  • 食後の高血糖が起こりそうだと思ったら、食後に散歩をしたり家事をしたりするなど、身体を動かしてみましょう。
  • 精製糖をなるべく避けましょう。(お菓子、ジュースなどはやめる)
  • 筋肉を太くするようなストレッチや軽い筋トレなどを行いましょう。
  • ビタミンB群をしっかり摂りましょう。
  • 衝動的に食べたくなったら、糖質ではなく、タンパク質、脂質の多い食品を選び、低血糖を緩和しましょう。(ナッツ類・枝豆、食べる煮干、塩の焼き鳥、チーズ、ゆで卵など)
  • よく噛んで食べましょう。
  • 食物繊維をしっかり摂りましょう。かむ回数を増やして、唾液の分泌を高め、満腹感を得やすくします。また、食物繊維は糖の吸収を緩やかにし、腸内の有用菌を増やして、腸内環境を整えることにつながります。
  • 血糖値を上げるものを食べたいときは、食事の最後に食べるようにしましょう。
  • アルコールはグリコーゲンの再合成を妨げて、低血糖の一因になります。
  • カフェインはアドレナリンやコルチゾールなどの分泌を刺激して、血糖の乱高下の原因になります。

2. 小麦(グルテン)が過食の原因になっている場合

 小麦に含まれるデンプン質である「アミロペクチンA」は、他の食品に含まれるデンプンより効率よく消化されて、急速にグルコースに分解されるため、食後の高血糖を起こしやすくなります。アミロペクチンAは、グルコースだけが連結した構造をしているため、食後の血糖上昇率は砂糖と変わらないか、あるいはそれ以上になることがあります。

 また、パンや小麦製品がやめられないグルテンアレルギーの人は、意思の弱さだけが原因ではなく、グルテンが持つ麻薬のような中毒性も原因になっています。小麦ポリペプチドは、血液脳関門というバリアを通過する性質を持ち、脳内に入り込んで、脳のモルヒネ受容体と結び付くといわれています。これは、グルテン由来のモルヒネ様化合物「エクソルフィン」と名付けられています。

対策

 まずは2〜3週間、グルテンフリーの生活を厳格に行ってみましょう。脳に霧がかかった状態が改善されたり、身体が軽くなったり、過食が改善されることがあります。良い変化がみられた人は、パンやラーメンなどの小麦製品をなるべく避けてみましょう。

3. リーキーガットが過食の原因になっている場合

 小腸粘膜の物質透過性が高まる現象を「リーキーガット」といいます。「Leaky Gut Syndrome(LGS):腸管壁浸漏症候群」ともいわれています。リーキーガットの原因には、精製糖、アルコール、カフェイン、抗生物質やNSAIDsやピル、一部の食品添加物、カンジダ菌の異常繁殖、慢性ストレス、栄養欠乏などがあります。

 小腸の粘膜が弱く、物質が通り抜けやすくなると、血糖値が急激に上がることにつながります。その後で急激に下がることで過食になる人もいます。また、ミネラル、ビタミンの吸収効率も低下します。

対策

  • 胃酸の材料となる亜鉛、ビタミンB6を摂取しましょう。

 胃は、ものを消化するために胃酸を作り出しますが、これには亜鉛とビタミンB6が必要となります。これらは腸管壁を無傷な状態に保つためにも必要なものです。

  • 腸管の粘膜壁を作るためにビタミンAとビタミンD、グルタミンを摂取しましょう。

 腸管の粘膜壁を作るためにはビタミンAが大切です。また、ビタミンDは小腸粘膜の再生や、小腸粘膜上皮細胞間の結合を接着させるタイトジャンクションに関与しています。加えて、腸壁が傷ついたときの修復に最も重要になってくるアミノ酸「グルタミン」も必要です。これらの栄養素がないと小腸粘膜が脆弱になります。

  • 腸内環境を改善しましょう。

 小腸粘膜の脆弱性の背景には、腸内環境の悪化があります。腸内環境を少しでも良くすることが過食の改善につながる人がいます。糖質を控えて、乳酸菌やビフィズス菌などを含む発酵食品やヨーグルトなどを食べるなどの方法があります。

最後に

 自己流の方法で過食が改善しない人は、1〜3について各種検査を受ける手もあります。食事栄養に詳しい医師と相談しながら、自身の過食を増悪させている要因を1つ1つ明確にできれば理想的です。重症例では、心療内科や精神科の摂食障害の専門の医療機関を受診した方がよい例もあります。

 脳細胞の栄養が糖質だけと思われている方がいますが、脳細胞、心筋、骨格筋など人の身体のほとんどの細胞は、糖質がエネルギー源として利用できないときは、脂質代謝によって生成される生理的な物質である「ケトン体」をエネルギーとして使います。

 人間は、糖質を積極的に摂らなくても、常に血糖を一定に保つために必要な糖を肝臓で自ら作る機能をもっています。ストレス食いをなくすために、まずは糖質を控え、良質な脂質やタンパク質、ビタミンやミネラルをしっかり摂取することが肝要です。

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