専門家に聞く「一人飯」でうつ病にならないためにできること
会社員として働いていると、どうしても一人で食事を取るしかない日があります。“一人飯”によるうつ病発症のリスクを高めないために、できることを医師に聞きました。
一人飯は、うつ病のリスクがあるという話を耳にすることがあります。しかし、会社員として働いていると、どうしても一人でランチ、残業飯、夜ご飯などを食べる機会が出てきます。
そこで精神科医の先生に、一人でご飯を食べるときの注意点を聞きました。
取材協力:坂本将俊先生
医療法人オハナ 長者町ファミリークリニック院長・理事長
2008年 大分大学医学部卒業、2010年 大分中村病院循環器内科、2012年 ハートクリニック大船 副院長、2014年 紫雲会横浜病院、2015年より現職へ。
資格:内科認定医、精神保健指定医
一人飯はうつ病になりやすい?
今回は、医療法人オハナ 長者町ファミリークリニック院長・理事長で、内科認定医・精神保健指定医の坂本将俊先生にお話を伺いました。
そもそも、一人でご飯を食べる習慣があるとうつ病になりやすいというのは本当なのでしょうか。坂本先生はこう答えます。
「その傾向はあります。しかし一人でご飯を食べる行為自体が、うつ病になるリスクがあるというわけではありません。一人での食事がうつ病発症の原因となる理由として、次の2つが考えられます」
1. 他者とのコミュニケーションが減少するため
「一般的に、複数人での食事は会話が生まれ、楽しさ・安らぎを感じやすい場になりやすいでしょう。家族であれば、食事は家族のコミュニケーションを取る大切な場であり、友人と食事も仲を深める場という側面があります。
一人で食事をすることが多いと、このようなコミュニケーションが少なくなり、孤独感を感じやすくなります。孤独はこころを不安定にする要因であるため、間接的にうつ病リスクを高める可能性があります」
2. 栄養がかたよりがちになるため
「食事と精神状態というのは、意外と深く関係しています。規則正しい食生活と栄養バランスの適正化によって、うつ病の発症リスクが低下するという報告もあります。実際に肉やジャンクフードを中心とした食生活はうつ病リスクを高め、魚や野菜を中心とした食生活はうつ病リスクを下げることも示されています。
自分一人のためだけの食事だと、『自分の食べたいときに食べる』『自分の食べたいものを食べる』と、つい食事時間や栄養バランスに無頓着になりがちです。食事時間が不規則だったり、栄養バランスのかたよりが慢性的に続いたりすると、こころも不安定になりやすく、これもうつ病リスクを高める一因になります」
一人飯習慣でうつ病になるのを回避する方法3つ
そこで坂本先生に、普段一人でご飯を食べることの多い人が、どうすればうつ病になるのを回避できるのかについて教えてもらいました。
「一人で食事を食べること自体がうつ病のリスクになるわけではありませんので、誰かとご飯を食べればそれで解決するわけではありません。原因は『コミュニケーションの減少』『食生活のかたより』ですので、この2つが解決できるように次のような生活を意識するとよいでしょう」
1. 1日3食、規則正しく食べる
「一人での食事だと、朝ごはんを抜いたり、夜ごはんが深夜になってしまったりと食事の時間が不規則になってしまいがちです。朝食を抜けば、午前の作業効率の低下やイライラ感などにもつながります。深夜に夕食を食べれば、睡眠の質が障害されてしまいます。これらはいずれもうつ病のリスクになります。
仕事の都合上難しいこともあるとは思いますが、できる範囲で工夫し、1日3食規則正しく食べるようにしましょう。例えば、
- 軽くでもいいので朝食を取る
- 睡眠の3時間前までには夕食を終わらせておく
まずはこのようなちょっとした工夫から始めてみてはいかがでしょうか」
2. 栄養のバランスに気を遣う
「自分のためだけだと、つい栄養バランスに無頓着になってしまう方も少なくありません。一人で食事を取ることが多い方は、自分の好きなものしか食べなかったり、ファストフードが多かったりなど、栄養バランスのかたよりがないかを見直してみましょう。
特に一人の食事で不足しがちなのは野菜や魚類です。これらはうつ病リスクを下げるという報告もありますので、積極的に食事に取り入れるように意識してみましょう」
3. 人とコミュニケーションを積極的に取る
「人付き合いは得意な人もいますし、苦手な人もいます。どちらが良い悪いということはありませんが、少なくとも他者とのコミュニケーションが極端に少ないことは、孤独感やむなしさを感じやすくなり、精神衛生上好ましいとはいえません。
一人で食事をする習慣のある方は、食事の際のコミュニケーションがないわけですから、それ以外の場で積極的にコミュニケーションを取るように意識してみてください。
- 時々、友人を誘って出掛けてみる
- 職場で同僚と世間話をしてみる
このようなちょっとした習慣でもよいのです。また、たまには親や友人などと一緒に食事ができるとなお良いですね」
一人飯は、自分が意識していないところで、不規則な食生活やかたよった栄養バランスになりがちになることが分かります。普段は一人飯が当たり前、という人は、その他のところでコミュニケーションを楽しむことを意識するのはもちろん、食事の取り方そのものも振り返ってみるのが良さそうです。
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