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なぜアンジェリーナ・ジョリーは乳房・卵巣の摘出手術を決断したのか?

アンジェリーナ・ジョリーが遺伝子検査を受け、がん予防のために両乳房を切除しました。乳がんや卵巣がんの約10%は遺伝性のがんといわれおり、リスク保因者は高い確率で病気を発症することが分かっています。

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乳房切除の2年後に卵巣摘出

 有名ハリウッド女優のアンジェリーナ・ジョリーは、2013年に乳房を切除、2015年には卵巣を摘出しました。遺伝子検査によって発症のリスクを予測し、即座に乳房の切除と再建を決断しました。さらに2年後初期卵巣がんの可能性が告げられると、卵巣と卵管の早期切除も実行に移しました。

 このことはアメリカばかりでなく日本でも大きな反響を呼びました。人ごととは思えない、という女性も大勢いたと考えられます。


写真はイメージで、記事と直接の関係はありません。(写真:Hot Gossip Italia/クリエイティブ・コモンズ表示 2.0 一般)元ページへリンク

遺伝性乳がん卵巣がんのリスク遺伝子の変異保因者

 アンジェリーナの近親者は母親をはじめ3人が、まだ若いうちに卵巣がんや乳がんで亡くなっています。母親が亡くなったのは56歳でした。

 遺伝子検査の結果、医師はアンジェリーナに「乳がんになる可能性は87%だ」と告げたといわれています。乳がん卵巣がんになりやすい体質を受け継いでいたということになります。

 このような遺伝性(家族性)乳がんのリスク遺伝子の変異保因者の場合は、がんの発症リスクが6〜12倍になるとも言われています(ただし、米国のデータで日本人を対象にしたデータはまだありません)。


遺伝子の変異を持っていると、通常と比べて発症リスクが大幅に高くなる。(参照:Navigene 遺伝性乳がん(HBOC)の特徴について

予防的切除によって、遺伝性乳がんの発症リスクを低減

 欧米では遺伝性乳がんは予防的切除によってリスクを減らせるとの研究結果が発表されています。そのため、遺伝性乳がんのリスクが場合は、予防的切除を行う場合があります。今回のアンジェリーナも、高い発症リスクを持っていましたが、予防的切除によってリスクを減らすことができると判断したため、手術に踏み切ったと考えられます。

もしかしたら遺伝性の疾患を調べていない可能性も?

 実は乳がんは、遺伝という観点からは大きく2種類に分類されます。遺伝によるものは「遺伝性の乳がん」と呼ばれ、それ以外のものは遺伝性乳がんと対比して、「散発性乳がん」と呼ばれています。

 アンジェリーナが受けた遺伝子検査は、遺伝性の乳がんに関する検査でした。そのため出てきた検査結果も、非常に高い発症リスクを予測するものでした。

 しかし、遺伝子検査によっては、散発性乳がんを調べているものもあります。散発性乳がんは発症にはさまざまな原因が関わっており、遺伝子を調べてもリスクが高いかどうかは判断が難しいです。検査結果もアンジェリーナの事例ほど高い発症リスクを予測してくれるわけではありません。

 アンジェリーナの決断は、自分の将来のがんを予防する行動として、多くの方に影響を与えました。医療技術の進歩により、がんなどを早期に予防をしていくことは素晴らしいことです。ただし、安易に遺伝子検査を活用すると、逆に将来の高い病気のリスクを見落とす可能性もあり、利用には細心の注意が必要といえるでしょう。

Navigeneは遺伝子検査に関する総合サイトです。現在は、遺伝性疾患(遺伝性乳がん、遺伝性大腸がん)と遺伝子検査の情報提供を行っています。

遺伝的リスクを理解することでがんや生活習慣病などを予防できること、そしてそれを手助けできるような情報サービスを目指しています。


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