Apple Watchの機能「アクティビティ」の秘密 Apple ジェイ・ブラニック氏に聞いた(前編)“ウェアラブル”の今(2/2 ページ)

» 2015年09月05日 06時00分 公開
[松村太郎ITmedia]
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“ゴール以降”も表現できるリング形状

 リングのデザインを採用したもう1つの理由は、ゴール達成後の表示にあった。

 「3重のリングのデザインは、それぞれの目標の達成度を一目で理解でき、あとどれだけで達成できるかもすぐに分かります。加えて、リングがぐるっと一周することで、ゴールを達成した後の記録も表現できます」(ブラニック氏)

 Apple Watchのアクティビティ機能のリングは、100%で目標達成だが、それぞれの円はゴールを過ぎても、2周目としてカウントを続けてくれる仕組みになっている。

 前述の通り、数字であれば特に制限なしに加算し続けることができるが、複数の項目や達成度は表現できない。バーは達成度を見ることができるものの、達成して以降の表現には向かない。リングの場合は、達成状況の把握が直感的で、さらにどれだけ余計に走ったのかを知ることもできる。例えば1周半なら150%、2周近くであれば200%、といった具合だ。

そのため、目標以上に歩いたり走ったりした分も、きちんとビジュアライズでき、視覚的に、達成感や挑戦の結果を発見することができるのだ。

アイコニックな3連リング

 リング型を採用した3つ目の理由は「アイコニックであること」とブラニック氏は話していた。確かにApple WatchのリングはすでにApple Watchらしいデザインとしてユーザーの間で認知が進んでいるが、それだけではない。

 ディスプレイを持たないアクティビティトラッカー(活動量計)の場合、達成状況を確認するにはiPhoneでアプリを立ち上げなければならない。ディスプレイがあったとしても、確認する習慣を自分で身に付ける必要がある。

 しかしApple Watchは、その日の達成状況を音と振動で通知してくれて、すぐにリングを確認することができる仕組みになっている。人々は確認のために、特別な操作を行ったり、「確認する」ことを習慣づける必要なく、Apple Watchでのエクササイズ機能を楽しむことができる。タップすら必要ないのだ。

 通知が届いたときに、小難しく、見方が分からない数字やグラフを見るのではなく、前述してきたような一目で状況が分かるリングを表示することで、生活の中でのエクササイズをより身近なものにしてくれるという。

小さなゴール「スタンド」

 Apple Watchのリングについて、ムーブの「赤」はカロリーを燃やす、エクササイズの「緑」はゴールに向かってプッシュする、など意味を想起させる配色にもなっているようだ。それぞれの色が異なることで視覚的に3つのゴールがあることが分かりやすくなっている。

 それ以上に重要なのは、リングのサイズ。活動によって消費するカロリーが、外側の最も大きなリングになっていることは、最も重要な計測項目であることの現れだ。

 その一方で、1時間に1分以上立つ習慣を、12時間達成するとリングが完成する「スタンド」は、Apple Watchが提供する日々のエクササイズにおける「最も小さなゴール」だという。

 「スタンドの通知については、ユーザーから非常に良い反応を得ています。座った体勢を長く続けることは、腰への負担もあるので、スタンドで座る時間そのものを短くする効果がありますが、さらに 1時間に1度のリマインダーをきっかけに、水を飲んだり、ちょっとビルの周りを歩いてこよう、などと体勢を変え、体を動かす習慣を促せます」(ブラニック氏)

 ブラニック氏は、Apple Watchを身に着けていることで、だんだん毎時50分にリマインダーを受け取る前に、その時間のスタンドの目標を達成しているようになったと話す。同時に、エクササイズにとって重要な「ちりも積もれば山となる」ともいうべきゴールに向けて取り組む感覚も養え、「非常にパワフルな結果が得られる」と指摘する。

 多くのエクササイズやダイエットは、習慣化することが非常に重要かつ、最も難しい部分だ。Apple Watchはこの部分に切り込み、人々の生活をより健康的なものに変えようとしている。

 明日公開予定の後編では、Appleの健康領域に関する取り組みと、ブラニック氏と実際にウォーキングをしながら、Apple Watchの使い方などを聞いた話をご紹介する。

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