「2016年、いまだ黎明期」のスマートウォッチ市場 Apple Watchのキラーアプリは(2/2 ページ)
IDCによると、2016年第3四半期のスマートウォッチの出荷台数は270万台で、前年同期と比べて51.6%減となった。Garminの急進とSamsungの堅調な販売を除くと、Apple、Lenovo、Pebbleの3つのメーカーは大幅な減速となっている。
Apple Watchの販売台数は110万台と見積もられており、前年同期に390万台を販売していたことから考えると71.6%減となった。販売シェアも7割から4割へと激減させている。
9月7日に新機種が発表され、それ以前から新機種に関する期待が高まっていたことから、該当する四半期は買い控えが起きたことが考えられる。その代わり、2016年第4四半期(Appleの会計年度では2017年第1四半期)の急進に期待がかかっている。
筆者は、スマートウォッチ市場自体がまだ黎明期を抜けていないと考えている。裏を返せば、人々がスマートウォッチに何を求めるのか、という目的性が定まっていない点が問題として考えられる。
Appleがスポーツ機能に力を入れていることからも分かる通り、「iPhoneと連携するAppleブランドのアクティビティートラッカー」という位置付けを脱していないのがApple Watchだ。
watchOS 3は、主となるインタフェースデザインも刷新し、文字盤と通知、そしてアプリにフォーカスし直した。
アプリの起動を素早くし、グランスがなくても気軽にアプリの機能を利用できる仕組みを備えた。しかし初期のApple Watchユーザーは、アプリ起動の遅さが経験として残っていることから、積極的なアプリ利用よりも通知で情報が受けられれば、という意識が強いと考えられる。
これでは、小さな文字盤を備えるアクティビティートラッカーや、アナログ文字盤でバイブレーションで知らせてくれるスマートウォッチでも同じことができてしまう。音声入力で簡単なメッセージは作成できるが、それ以外はやはりiPhoneでアプリを起動しなければならないからだ。
今後の注目点は、Apple Watchらしさの醸成
Apple Watchは、アクティビティートラッカーとの競合状態を脱しない限り、ウェアラブル市場を支配する存在にはなりにくいと予測している。
Apple Watchらしさを作り出し、広めていかなければならない、ということだ。
そのタイミングが2017年になるのか、それ以降になるのかはまだ分からない。どんなアプリが登場し、人々のスマートフォンの使い方に変化を及ぼすのかを見極めていく必要があり、来年の本連載の役割でもあると感じる。
Appleが2017年にも新しいハードウェアをリリースするかどうかはまだ分からないし、2018年3月頃までスキップすることも一行だ。前述のような、これから搭乗するキラーアプリ登場と買替え需要のタイミングをうまくマッチさせることが得策だからだ。
スマートフォンとは異なり、「スマートウォッチの買い換えサイクル」はまだ検出できないため、こちらも見極めていくことになるだろう。
現状考えられるキラーアプリは、Apple Payだ。そう思った理由は、日本でスタートしたApple Payを1カ月半ほど利用した経験からだった。
筆者は普段米国カリフォルニア州サンフランシスコ郊外で暮らしており、2014年からApple Payがスタートしているが、それにもかかわらずApple Payを利用するチャンスはほぼない。Apple Watchにもクレジットカードを設定すれば、iPhoneなしでも買い物ができる。しかし、利用可能店舗が少なすぎて、話にならないのが現状だ。
ところが、10月中旬から2カ月弱滞在した東京では、10月25日の日本におけるApple Payスタート以降、Apple WatchによるApple Pay利用をしなかった日はなかった。SuicaとJCBカードを登録すると、鉄道やコンビニ、タクシーなど、毎日の生活で必ず利用する施設や店舗で、Apple Payが利用できるようになっていたのである。
あまりに毎日使うため、普段左手に装着しているApple Watchを右手に付け替えて、自動改札をよりスムーズに通過できるよう工夫したほどだった。Apple Payとこれを日常的に使える環境は、Apple Watchにとってまたとないチャンスとなる。
今回のApple Pay対応でSuica向けに用意された、認証なしで改札を通過できる「エクスプレスカード」は、Apple Pay利用に大きな価値をもたらす。
既に交通機関でのApple Pay利用ができるロンドンや、サンフランシスコへと拡大していくことができれば、都市ごとにではあるが、Apple Watch需要を刺激することになる。本丸は米国ではニューヨーク、そして中国の各都市だ。
各都市のインフラが関係するため、そう簡単に話が進むわけではないと思うが、Apple Watchのキラーアプリ作りは、こうした産みの苦しみの連続になることが考えられる。
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