カシオはなぜ、今スマートウォッチを出すのか 樫尾和宏社長に聞く:荻窪圭が直撃(2/2 ページ)
“カシオらしいスマートウォッチ”は今後どうなっていく?
荻窪 今回のWSD-F10はアウトドアモデルですが、リストデバイスとしては内側にセンサーをつけた活動量計デバイスが最近話題になっています。そういう方向性はカシオとして考えられますか? 昔、「BP-100」という血圧を測れる腕時計などを出していましたよね。
樫尾氏 今回出すスマートウォッチも、センサーによって着けている人の状態をかなり知ることができるのですが、それをもっと活用していきたいですね。それからヘルスケア系は、バイタルセンサーも含めて、今一度やってみてもいいかなと思っています。腕に着けている、身体に密着しているからこそ取れる情報はありますから、そういう意味では腕だけではなくさまざまな情報を解析して、それらとセットでヘルスケアというのはあると思っています。他社もやっていますが、我々が同じ事をやってもしょうがないので、うちだからこそできることをきちんと見つけてやっていきたいと思います。
荻窪 スマートウォッチはどんな発展をしていくでしょう。
樫尾氏 今でいうと、時計市場の新ジャンルのような位置付けですが、いろいろな可能性を見付けていきたいですね。
今カシオの社内は、時計、情報機器、デジタルカメラなど、モノの形によって事業部が分かれているのです。ですから、例えばかつてMP3形式の音楽ファイルが再生できるEXILIMなども開発していたものの、それは「iPod」にはなれなかったんですね。音楽機能はあくまでもオマケでしたから。カメラの事業部で作るとカメラにしかならない、時計の事業部でやると時計にしかならないのかもしれません。
だから今回のスマートウォッチは、新規事業開発部という、時計とは離れたところで開発を進めました。一方で、WSD-F10がデジカメなどと本当の意味で連携ができているかというと、そこはまだ完全ではないところもあります。今はまだ、FR100と“つながる”というレベルです。
もしかしたら、アウトドア事業部やウェアラブル事業部を作って開発していく、センシング事業部を作ってバイタルセンシングを徹底的に研究する、というような形にした方がいいかもしれない。まだ具体的には動いてませんが、いろんな可能性があります。
そういう意味では、今回の初号機であるWSD-F10で、いろいろな可能性を見付けていきたいと思っています。それが見付けられたら、WSD-F10を作るために、情報機器と時計のチームを融合して新しいチームを作ったように、時計以外のジャンルへも新しいチームを作っていきたいという構想はあります。
本来、新規商品や新規事業は、最初に「売れる」「売れない」で判断してはいけないんです。もちろん売れないのはイヤですが、単に売れればいいという話ではなくて、新しいユーザーがどう新しい使い方をしてくれたかどうかが重要です。
話は元に戻りますが「創造と貢献」。新しいニーズを生み出して広げていければ、そこをやっていけばいいと思います。
荻窪 最後にWSD-F10をCESで披露してからのてごたえはありますか。それから、ぜひ今後の抱負をお聞かせください。
樫尾氏 WSD-F10は「カシオらしい」と言っていただけるのが一番うれしいですね。カシオらしい時計がようやく出ましたね、と期待が伝わってきます。
さまざまな可能性を持っている初号機ですが、最終的にはウェアラブルの世界をうちでもしっかり作っていきたいと考えているので、そのためのスタートにしたいと思っています。みんながカシオのスマートウォッチを身に着けている、という世界にむかって頑張っていきたいと思ってまいす。
カシオは、QV-10やG-SHOCKなど、今まで世の中にない新しいものを出してきましたが、直近でいうとそれほどそういう製品が多くないのが反省点です。世の中をびっくりさせる、世の中を変えるような製品を出せるよう最大限がんばっていきたいと思っています。今はそういう新規商品を脱すのは難しい時代といわれてますが、できない話だとは思っていません。既存市場への参入ではなく、新しい市場を作っていくという使命感があります。
荻窪 どうもありがとうございました。
我々がカシオ計算機に期待する“カシオらしい製品”というものがあって、カシオが新奇な(ときには珍奇な)製品を続々と出していた時代を知っている人はみな同じようなイメージを持っていると思うのだけれども、樫尾和宏社長になってそういうカシオらしさがまた復活してくれそうで嬉しい限りである。
スマートウォッチに限らず、ウェアラブル機器の新しい市場展開に期待しております。
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